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中足骨疲労骨折~足の甲の痛み~【マラソン・ランニング障害】 

市民ランナーで足の甲に痛みを感じた場合、それはもしかしたら疲労骨折かもしれません。疲労骨折とは『健常な骨に、通常は骨折しない程度の負荷が繰り返し加わって生じる骨折』です。今回は主に中足骨(ちゅうそくこつ)の疲労骨折について記述します。


初期の疲労骨折では痛みがあっても意外と我慢して走れてしまうので要注意です。パキッと折れる骨折とは違い骨の内部構造が壊れるイメージです。赤部分に痛みが出現します。ランナーの場合は特に第2・3中足骨の中央が好発部位です。
 
第二中足骨疲労骨折20190824  

疲労骨折の部位別頻度

病院で疲労骨折と診断された2,886名の統計が下の表になります。1位の腰椎は腰椎分離症と呼ばれる疲労骨折でほとんどが10代の若年者に発症し、市民ランナーが発症することはほとんどありません。

1位腰椎48.9%
2位中足骨18.4%
3位脛骨15.3%
4位腓骨4.2%
5位足舟状骨2.7%

中足骨の疲労骨折全体で言うと第5中足骨が最も多いのですが、このほとんどがサッカー選手で、陸上選手に限定すれば第2・3中足骨、特に骨幹部中央(真ん中)が好発部位です。


原因

多くがオーバートレーニングやオーバーユース(使い過ぎ)です。筋肉疲労が蓄積すると地面からの着地衝撃を吸収できず、骨への負荷が増える事が実験で確認されています。しかし初心者の市民ランナーでも走り始めて1~2ヶ月で疲労骨折を発症することが結構あります。

トラックや土のグラウンドよりも固いアスファルトでの練習の方が疲労骨折のリスクが高まります。また底の薄い裸足感覚シューズも疲労骨折の原因になり得ます。

女性ランナーでは慢性的に骨密度が低下している事があり注意が必要です。


中足骨疲労骨折の症状

腫れが確認できることは稀で、圧痛と運動時痛が主な症状です。初期の症状は軽度の痛みですが、起床時の歩き始めは痛みが強く、運動が不能になるほどの痛みは起こらないが、ランニングの継続により次第に痛みが増悪します。

靴ひもを強く結び過ぎて痛みが出ているだけだと勘違いされているランナーもちらほら見かけます。多くのランナーは足の甲が痛いと受診されます。


テスト法

・ホップテスト:痛みのある片足でジャンプを10回程度して痛みがあれば陽性。
・側方圧迫テスト:足の前足部を両側から手の平で圧迫して痛みがあれば陽性。


画像検査

レントゲンでは初期の疲労骨折は確認できない事が多々あります。レントゲンでは骨が修復される過程でできる仮骨(かこつ)で疲労骨折を診断しますが、この仮骨が形成されるまでに2~4週間かかります。
第二中足骨疲労骨折20190824-b  

第二中足骨疲労骨折20190824-5 

超音波エコー検査では初期の疲労骨折でも確認できます。骨皮質の膨隆や不整(骨がポコッと盛り上がったり凸凹する)や、骨の上の軟部組織の腫脹が疲労骨折の所見です。

正常な第2中足骨
中足骨疲労骨折・足の甲の痛み 

第2中足骨の疲労骨折
中足骨疲労骨折・エコー超音波検査 

第2中足骨疲労骨折のエコー動画
赤い点滅は炎症を表しています。骨が壊れるとそこを修復するために周囲から新しい血管が伸びてきます。つまり赤い点滅は『現在工事中』のサインです。
※プローブを動かす際の赤い点滅は関係ありません。



別の症例ですが掃除機を足の甲に落とし、通常の中足骨骨折をした市民ランナーのエコー画像です。

足の甲がパンパンに腫れ・圧痛が強いものの病院で2回レントゲンを撮りましたが異常なしと言われたようです。レントゲンでは異常が確認できなくても症状が強ければ基本骨折しているものとして対処することも大切です。
第2中足骨骨折20190705 (1) 

第2中足骨骨折20190705 (2) 


治療

一般的な中足骨骨幹部の疲労骨折であればランニングの中止のみで十分で、ギプス固定は必要ありません。4~6週間の安静後、ジョギングから開始します。

しかし安静にすると10日前後で日常生活での支障はなくなります。そうなると『4週間は安静を指示されたけれど、意外と痛みもないし、自分の場合は走っても大丈夫だろう!』と変な自信とともに走り出すと再度痛みが増悪するので注意が必要です。疲労骨折の部位によっては非常に治りにくい場合もあります(第5中足骨・舟状骨)ので自己判断には注意してください。

低出力超音波パルス・LIPUS(ライプス)と呼ばれる超音波を患部に週5回程度、1回20分照射すると骨折治癒期間が40%短縮されたりもします。LIPUS機能のある超音波治療器を設置している治療院を探してください。


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マラソン・ランニング・ジョギング障害!

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蜂窩織炎・腫れ・熱感・発赤【マラソン・ランニング障害】 

 マラソン・ランニングをしていて怪我をした際に組織が腫れる事がありますよね。しかし腫れの中には注意しなければいけない腫れがあります。それが熱感(触ると熱がある)や発赤(皮膚が赤い)を伴った腫れです。この場合、筋肉や腱、靭帯など運動器の障害ではなく、感染症の可能性もあります。

市民ランナーであれば靴擦れをおこしたり、トレイルランナーであれば転倒して脚に傷がある方もいるのではないでしょうか。その小さな傷からばい菌が侵入して増殖すると蜂窩織炎(ほうかしきえん)を発症します。特にフルマラソン等を走った後の1週間は免疫力が低下しているので要注意です。

蜂窩織炎とは黄色ブドウ球菌(おうしょくぶどうきゅうきん)や溶連菌(ようれんきん)と呼ばれる常在菌(普通に皮膚に存在している菌)が免疫力が低下したのをきっかけに皮膚の小さな傷から侵入し増殖する感染症です。

体は表面から表皮→真皮→皮下組織→筋肉→骨という構造ですが、蜂窩織炎はこの中の真皮から皮下組織(主に脂肪組織)に起こる感染症です。
蜂窩織炎20181214 


【症例1】
自身と一緒に亀岡ハーフマラソンに参加した30代男性市民ランナーKさん。2018年12月9日に亀岡ハーフを完走。その後12月13日頃に右膝のお皿の下あたりに痛みと腫れを自覚。ちなみに1週間前に受診した際は膝の不調はありませんでした。今回受診時の写真を下に表示します。
蜂窩織炎20181218 

確かに右膝のお皿の下が腫れています。触ると痛みがあり少しブヨブヨしています。レース後の膝の痛みなので普通に考えると『膝蓋腱炎・関節水腫・膝蓋前皮下包炎・膝蓋下脂肪体炎など』が頭に浮かびますが、よく観察すると少し発赤(ほっせき)を認めます。先ほど列記した障害では腫れはあっても発赤はありません。

さらによく観察すると膝の前に小さな傷があります。この方はお仕事で膝を突くことが多いとの事です。しかもレース後なので免疫力も低下していると考えられます。
蜂窩織炎20181218b 


エコーで膝蓋骨の下を観察すると通常は下図のように描出されます。(これは正常像です)
蜂窩織炎・腫れ・発赤・熱感 

Kさんの膝をエコーのドプラと呼ばれる炎症を表示する機能を使って観察すると、皮下組織(脂肪組織)に赤い炎症反応が多数確認できました。
蜂窩織炎・腫れ・発赤・熱感 

その為、蜂窩織炎を疑い皮膚科の受診をすすめて抗生物質の処方を受けられました。

下の動画は初診時からの経過をまとめたものです。


まぁ滅多に起こるものではありませんが、腫れは腫れでも『熱感と発赤を伴った腫れは要注意!』ということです。あとレース後1~2週間は自覚はなくても免疫力が低下しているので体調管理には気を付けて下さい。数年前、自身も萩往還140kmを雨と風の中で完走し、その3週間後に帯状疱疹を発症した経験があります。
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シンスプリント(脛骨過労性骨膜炎)のエコー画像・動画 

 初級者市民ランナーが走り始めたり、中上級者市民ランナーが急に練習量を増やしたり、インターバルやウィンドスプリントなどのダッシュ動作を繰り返すと下の赤色部分に痛みが出る事があります。俗にいうシンスプリントです。

しかしシンスプリントに関する記事は無数に存在するため、説明は省略して、エコー(超音波)検査ではどのように描出されるのかを中心に解説します。


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下腿部の断面とシンスプリントの好発部位

下の図は下腿部の断面です。一般的にシンスプリントは脛骨の下1/3の内側後方に好発します。正面ではないので少し触れにくい場所です。ちなみに脛骨(けいこつ)の前面には筋肉がなく、皮下脂肪の直下に骨があるため打撲などするとすごく痛いので『弁慶の泣き所』と言われますね。
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シンスプリントのエコー画像検査

下図のの部分からプローブを当てます。一般的に疲労骨折の場合は①から確認しますが、シンスプリントの場合は②から確認します。
shinsplints20180520b.jpg 

①からエコー画像を見ると皮下のすぐ下に脛骨が確認できます。
※左イラストは輪切りですがエコー画面は縦切りで左が頭側・右が足先側です
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②からエコー画像を見ると脛骨の前に筋肉があるためやや骨は不鮮明になります。
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シンスプリントのエコー動画検査

エコーにはドプラ機能と呼ばれるものがあります。これは炎症が起こっているとその部分が赤く点滅するという機能です。プローブを移動する際には多少赤い点滅がみられたり、正常な血管も多少描出されますが、主に炎症で新たに作られた異常な血管を描出します。



動画の解説

一般的に組織が壊れるとそこを修復するために周囲の血管から新しい血管(髪の毛よりも細い)がニョキニョキ集まってきます。道路が陥没して壊れてしまうと砂利やセメントを積んだトラックが沢山集まってくる工事のイメージです。

小さな陥没であれば小規模な工事で終わるので1週間くらいで終了します。しかし工事中にもかかわらずさらに大きな災害が発生すると陥没が大きくなり工期が1ヶ月くらいの中規模工事が必要になります。そこで運悪くさらに災害が発生すると工期が3~6ヶ月を要する大規模工事が必要になります。

この炎症の像で今どのくらいの工事が体の中で行われているのかが分かります。ちなみに上の動画は中~大規模の工事で、スポーツ中だけではなく、日常生活での歩行でも痛みがある方です。(1ヶ月くらい前から痛みを感じ始めるも無理に練習を継続していた)

つまりシンスプリントを発症した際には体の中ではそこを修復するために工事が行われています。それを自然治癒力と言いますが、その自然治癒力を邪魔しないようにする事が一番大切です。炎症が起こっているのにマッサージなどをおこなうと確実に悪化します。

小規模な工事の段階であれば休まずに練習量の調整で治す事も可能です。しかし大規模な工事が開始されると練習を中止したとしても工事が終わるのに数ヶ月を要します。ただ軽度の痛みで練習を中止できないのが市民ランナーですよね。自分も『走っていればその内治るっショ』と楽観的なランナーです。


血管と神経の関係

上の動画で血管の増殖が確認されましたが、血管には必ず神経線維も伴走しています。つまり炎症により異常な血管が増殖すると神経線維も増えるために痛みに対して過敏な状態になります。それが圧痛(押すと痛い)です。ただシンスプリントの場所はやや深いところにある場合もあるため圧痛が不鮮明な場合もあります。




シンスプリントと疲労骨折の関係~少し難しいので興味がなければ読み飛ばしてください~

シンスプリントと疲労骨折は全く別物だとする意見と、シンスプリントがさらに悪化して疲労骨折になるとする意見と未だ結論が得られていません。しかし最近の高分解能MRIでの観察からシンスプリントと疲労骨折は関係があるとする意見が強くなっています。

骨の周りには骨膜(こつまく)と呼ばれる薄い膜があり、骨膜の下に皮質骨(ひしつこつ)があります。そして中央は空洞になっており骨髄(こつずい)と呼ばれます。
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ランニングやジャンプ動作で脛骨にストレスがかかり続けると最初に骨膜の炎症・肥厚が起こります。更にストレスがかかり続けると骨髄に出血・浮腫が起こります。更にストレスがかかると骨皮質に異常像・亀裂が起こります。

(皮質骨)に異常が現れるのは一番最後でまずは骨膜や中の骨髄に異常が現れます。①・②の段階ではMRIでは発見できますが、レントゲンでは異常は見つかりません。ちなみに骨膜は知覚神経と血管が豊富で意外と痛みの原因になります。

一般的にの段階ではシンスプリント の段階では疲労骨折 の段階では骨髄を輪切りにしたMRI画像で異常が一部にとどまっている場合はシンスプリント、異常が骨髄の全体や広範囲に広がっている場合は疲労骨折と判断されます。

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【ランナー専門外来】マラソン・ランニング・ジョギング障害治療

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膝蓋下脂肪体炎・ホッファ病【マラソン・ランニング障害】 

マラソン・ランニングをしていて膝のお皿(膝蓋骨)の下あたりに鋭い痛みを感じた場合、それはもしかしたら膝蓋下脂肪体炎(しつがいかしぼうたいえん)かもしれません。

膝蓋骨(しつがいこつ)の下の障害で有名なのは膝蓋腱炎(ジャンパー膝)やオスグット病ですが、少し知名度の低い障害に膝蓋下脂肪体炎があります。

膝蓋腱炎の場合は主に青丸●部分に痛みがありますが、膝蓋下脂肪体炎の場合は赤丸●部分に痛みがあります。痛みの場所は近いのですが、痛みの出る動作などに少し違いがあります。

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※鑑別診断には膝蓋腱炎・オスグッド病・変形性膝関節症・膝蓋大腿関節症・半月板損傷・前後十字靭帯断裂・離断性骨軟骨炎・滑液包炎・突発性骨壊死・脛骨高原骨折・鵞足炎・骨軟部腫瘍、その他がありますので素人判断は要注意です。


膝蓋下脂肪体とは

膝蓋骨の下にある膝蓋腱のさらに奥深くにある脂肪の組織です。脂肪と痛みって関係があるの?と思われる方も多いでしょうが、実は脂肪組織は痛みの原因になる事が多いのです。
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蛇足ですが、膝関節の中の組織の痛みの敏感度を表したのが下図です。色が濃い方が痛みを強く感じるのですが、膝蓋下脂肪体は真っ黒(4:Severe pain=激痛)で痛みをとても強く感じる組織です。逆に軟骨や半月板は色が薄くあまり痛みを感じません。

実はこれ、海外のDye先生が麻酔下で自分の膝の組織を一つずつ金属の棒で押してもらい痛みの程度を調べた有名なものです。膝蓋下脂肪体を押された時はさぞ痛かったでしょう。。。
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膝蓋下脂肪体炎・ホッファ病(Hoffa)とは

何らかの原因(過度な運動や打撲などの外傷)で膝蓋下脂肪体に微少出血・炎症が起こります。炎症により本来は弾力がありやわらかい脂肪体が結合組織性肥大を起こし線維化するために柔軟性が失われ硬くなります。簡単に言えば絹ごし豆腐が木綿豆腐に変わるとでも言いましょうか。

本来なら脂肪体は膝を伸ばすと前方へ移動するのですが、硬くなった脂肪体は膝を伸ばしても前方に移動できなくなり、伸ばし切った際に後方の関節内(大腿骨と脛骨の間や大腿骨と膝蓋骨の間)に挟み込まれる事で鋭い痛みを感じるようになります。

MRIでは脂肪体の炎症が確認できます。
IFP20180228-3.jpg 


膝蓋下脂肪体炎の症状

・膝を伸ばし切った時に膝蓋骨の下に鋭い痛みを感じます
・膝にわずかな伸展制限(伸ばし切れない)がみられます
・膝を伸ばした状態で押すと痛みがありますが、曲げた状態で押すと痛みが消失・減弱します
・膝蓋下脂肪体の肥大が強いと膝蓋骨の下がぷくっと膨れています
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Hoffa sign(自分で確認する場合)

椅子に座って膝を曲げた状態で両サイドから膝蓋下脂肪体を押し、そのままの状態で膝を伸ばしていった際に痛みがあれば陽性になります。動画はYoutubeで確認できます。
(動画)※リンク切れ確認していません


エコー(超音波)検査で膝蓋下脂肪体を確認する

エコーでは下図の様に膝蓋下脂肪体を描出できます。
IFP20180228-1.jpg 

エコーには組織が炎症を起こしているかどうかを確認するドプラと呼ばれる機能があります。ドプラ機能では炎症があると画面上に赤い点滅が表示されます。下の動画は同一人物の健側と患側ですが、痛みのある方は膝蓋下脂肪体に炎症反応が確認できます。




治療

動きの悪くなった膝蓋骨や硬くなった脂肪体を徒手的に動かしていきます。なかなか自分ではできませんがイメージ的にはこの動画※音あり(Youtube)の様な感じです。

また長座位で膝の下に丸めたタオルを置いて、太ももの前の筋肉を収縮させて押し付けていくリハビリ(パテラセッティング)も有効です。
ps20180228.jpg 

それでも痛みが改善しない難治性のものには膝蓋下脂肪体に直接ステロイド+局所麻酔薬を注射したり関節鏡による部分切除をする事もあるようです。

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二分靭帯損傷・踵骨前方突起骨折【マラソン・ランニング障害】 

ロードを走っていて足首を捻挫(ねんざ)する残念なランナーはそれ程いないと思いますが、トレイルを走っていると足首を捻挫することはあると思います。足首の捻挫では一般的に前距腓靭帯(ぜんきょひじんたい)を損傷することが多いのですが、それとは別の二分靭帯(にぶんじんたい)と呼ばれる少しマイナーな靭帯を損傷することもあります。

圧痛の部位が微妙に違います。
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二分靭帯はその名の通り、二つに分かれている靭帯です。踵骨→舟状骨をつなぐ踵舟靭帯(しょうしゅうじんたい)と踵骨→立方骨をつなぐ踵立方靭帯(しょうりっぽうじんたい)の2つをあわせて二分靭帯と呼びます。

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巷では前距腓靭帯の損傷に比べ二分靭帯の損傷は軽視されていて『放っておいてもそのうち治る』などと言われることもある可哀そうな靭帯ですが、実は場合によっては完治までに長期を要します。

当然、二分靭帯が単独で損傷する場合もありますが、前距腓靭帯やその他の靭帯と一緒に損傷する場合もあります。

まぁ二分靭帯の単独損傷であれば、テーピングやサポーターなどで固定し安静にすれば1~3週程度で痛みは軽減・消失するでしょう。

踵骨前方突起骨折

内返し捻挫の際に二分靭帯が断裂するのではなく、靭帯に引っ張られて踵骨前方突起しょうこつぜんぽうとっき)と呼ばれる骨の一部が裂離骨折を起こすことがあります。
BFL20171007-6.jpg 

圧痛は二分靭帯と同じところにありますが、この場合は単なる二分靭帯損傷と判断して放置していると症状が長期化することがあります。下図黒○の部分が踵骨前方突起でそこに赤のラインの二分靭帯が付着します。
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実は踵骨前方突起骨折があったとしても、レントゲン検査では骨片が他の骨と重なるためにかなりの確率で見落とされてしまいます。CT検査をすれば確実に診断されますが、捻挫でいきなりCTを撮影することは稀です。痛みが半年~1年くらい続き、少しおかしいなと言うことでCTを撮影すると踵骨前方突起骨折が見つかることもあります。

BFL20171007-7.jpg 

超音波エコー検査では比較的簡単に描出できます。

同一人物の健側
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同一人物の患側
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健側と患側
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踵骨前方突起骨折の動画


上記の方も初期にレントゲンを撮影されたそうですが骨折はないとの診断を受けました。受傷後3週間経過してもやけに痛みが強いなということでエコー検査を受けました。ちなみにこの方は前距腓靭帯の損傷と腓骨の裂離骨折もありました。強く足首を捻じると場合によっては複数個所を骨折することもあるんですね。
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受傷後、比較的早期に踵骨前方突起骨折が見つかればギプスでの固定を行い骨癒合を目指します。発見が遅れた場合にはサポーターなどでの固定が行われ痛みの軽減・消失を目指します。時に骨が癒合せず痛みが残存することがあり、その場合には手術による骨接合術や骨片摘出術が行われることもあります。骨癒合しなかった人すべてに痛みが残存するわけではありません。

インターネットで簡単に情報を得ることができるようになってはいますが、二分靭帯は基本的に安静にして湿布を貼っておけばそのうち治るという情報を鵜呑みにして放置するもなかなか痛みが引かない場合は踵骨前方突起骨折やその他の外傷・障害が隠れているかもしれませんのでお気をつけ下さい。

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大腿四頭筋の肉離れ【マラソン・ランニング障害】 

急激なダッシュ動作や体勢が崩れた際の踏ん張り動作で太ももの前面に痛みを感じたらそれは大腿四頭筋(だいたいしとうきん)の肉離れかもしれません。

太ももの前面にある大腿四頭筋は4つの筋肉の総称です。内側に内側広筋(ないそくこうきん)・外側に外側広筋(がいそくこうきん)・中央の浅層に大腿直筋(だいたいちょっきん)・中央の深層に中間広筋(ちゅうかんこうきん)があります。

この中で肉離れを起こすのはほとんどの場合、中央の浅層にある大腿直筋です。※二関節筋のため

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エコーでは下図の様に描出されます。
長軸像(縦に見ている)
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短軸像(輪切りに見ている)
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症状


圧痛(押すと痛い)
突っ張り感
階段昇降時痛
ストレッチ痛
ランニング痛
しゃがみ動作時痛

重症度


腹臥位(お腹が下)で痛みのない方の膝と痛みのある方の膝を交互に曲げて、膝関節の動きにどれだけ制限があるかで判断できます。通常は角度計で計測しますが、無い場合は踵と臀部の距離(HBD:heel buttock distance)が簡便です。
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また太ももの中央に圧痛があれば比較的軽症の場合が多く、股関節や膝関節に近づく程に中等症~重症、もしくは治癒に時間がかかる事が多いです。中央の筋腹は血流が良く、筋肉と腱の移行部はやや血流が悪く、腱付着部はさらに血流が悪いためです。
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治癒・復帰までの期間


軽症で1~2週間・中等症で4~6週間・重症で3~6ヶ月。あくまでも目安です。


大腿直筋肉離れのエコー画像

筋線維(筋周膜)が途中で途絶しています。断裂部の周囲が明るく高エコーに描出されているのは周囲にじわじわと出血が広がっているためです。まずは長軸像です。
大腿四頭筋・大腿直筋・太もも肉離れ・京都・整骨院・接骨院 
 
次に別の症例の短軸像です。大腿直筋内に低エコー像が確認できます。
太もも・にくばなれ・ももかん 

次も別の症例の短軸像です。大腿直筋内に低エコー像が確認できます。

大腿直筋肉離れ20170824b 

一般的に肉離れを起こした筋肉は腫れて大きくなります。
大腿直筋肉離れ20170824 

動画



大腿部の打撲・挫傷


トレイルランニングで転倒し岩や木に太ももの前面を強打したり、コンタクトスポーツで相手選手の膝が入ったり(通称:ももかん)すると大腿四頭筋が損傷します。肉離れの時と違い、大腿骨のすぐ上にある中間広筋が損傷する事が多いです。皮膚の上から圧がかかると浅層の大腿直筋ではなく、深層の中間広筋が大腿骨に強く押し付けられ、時に筋肉内に血腫が確認できます。

エコーでは大腿部(この場合は外側広筋)に黒い血腫が確認できます。下図(長軸像)は患側と健側を並べています。
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下図は大腿部を輪切り(短軸像)にしたエコー画像です。大腿骨の直上に大きな血腫が広がっています。
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骨化性筋炎


打撲などで筋肉が損傷すると出血し時に血の塊である血腫(けっしゅ)ができます。その状態で十分な安静を取らずに不必要な刺激が加わると血腫内にカルシウムが異常に集積して石灰化が生じて骨が形成されます。本来ないはずの場所に骨ができるので大腿部に痛みや腫れ、関節の可動域制限(膝が曲げられない)などの症状が見られます。無理のない範囲で段階的にスポーツ復帰する事で徐々に小さくなります。(4~6ヶ月)

エコーでは骨化性筋炎は骨のすぐ直上に白い線として確認できます。そこでエコーが跳ね返されるので本来は描出されるはずのその下にある骨の輪郭が途切れます。
骨化性筋炎・大腿部・太もも・痛み 

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レントゲンでは下図の様に確認できます。受傷から最初の骨化が起こるまでに約1~2週間ですが、レントゲンで確認できるまでには約1ヶ月を要します。しかしエコーでは比較的早期に確認可能です。
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前下脛腓靭帯損傷・足首の捻挫【マラソン・ランニング障害】 

一般的に足首を捻挫すると、①前距腓靭帯(ぜんきょひじんたい)と呼ばれる靭帯を損傷・断裂します。しかし稀に『ただ捻挫しただけなのに中々治らない』場合、②前下脛腓靭帯(ぜんかけいひじんたい)と呼ばれる靭帯を損傷・断裂しているかもしれません。前下脛腓靭帯損傷では骨折を合併している事も多いので注意が必要です。

一般的な捻挫・前距腓靭帯損傷は
こちらのページへ。

※鑑別として、二分靭帯損傷、腓骨筋腱損傷・脱臼・腱鞘炎、踵骨前方突起骨折、距骨外側突起骨折、足根洞症候群、距骨骨軟骨損傷、衝突性外骨腫etc.があるので、安易な素人判断は危険です。

足首には脛骨(けいこつ)腓骨(ひこつ)と呼ばれる2つの骨がありますが、それらを結合しているのが脛腓靭帯です。脛腓靭帯は前にも後ろにもありますが、一般的に損傷するのは前下脛腓靭帯(以後は脛腓靭帯)です。

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痛みの出る場所

指で押した時の圧痛は前距腓靭帯の損傷では外くるぶしの前下方の赤丸にありますが、脛腓靭帯の損傷では外くるぶしの前上方の青丸にあります。脛腓靭帯の損傷は前距腓靭帯の損傷よりも疼痛が出やすい部位として知られています。
※靭帯結合(syndesmosis)は疼痛の出やすい部分。

脛腓靭帯の深層は豊富な脂肪組織があり、大きな血管が走っており、脂肪組織に分布する侵害受容器やこれらの血管および伴走している神経が傷つき、痛みが出ると考えられています。
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痛みの出る動きと徒手検査

前距腓靭帯の損傷では足首を底屈(下げる)や内返し時に痛みが出るのに対して、脛腓靭帯の損傷では足首を背屈(上げる)と痛みが出ます。足首を上に上げると脛骨と腓骨に離開する力が働き脛腓靭帯が刺激されます。

前距腓靭帯の損傷では普通に真っ直ぐ歩くだけならそれ程靭帯にストレスがかからない為に痛みが出ません。しかし脛腓靭帯の損傷では真っ直ぐ歩く、しゃがみ動作、階段昇降動作など足首が曲がるだけで脛腓靭帯に常にストレスがかかり続けるのでに中々治癒しにくいとされています。

脛腓靭帯の損傷を判断する一つの方法として外旋ストレステスト(External rotation test)があります。下の図の様に足首を回旋させると脛骨と腓骨の間が離開して脛腓靭帯にストレスがかかり痛みが誘発されます。

患者を椅子に座らせ膝を90°屈曲位にし、検者は片方の手で下腿の近位を把持し、もう一方の手で足関節中間位で足部を外旋させます。
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脛腓靭帯のエコー画像

脛腓靭帯は比較的太いが、薄い帯状の靭帯です。下のエコー像は下腿部を輪切りにした像で、画面の上がすね側、画面の下がふくらはぎ側です。矢印の正常な脛腓靭帯が2つの骨を橋渡しするように走行しています。
前下脛腓靭帯損傷・AITFL・足首の捻挫・エコー 

下図は脛腓靭帯損傷のエコー画像です。靭帯が上手く描出されず低エコーになっています。
前下脛腓靭帯損傷・AITFL・足首の捻挫・エコー 

下図は同一人物の良い方の足と悪い方の足を並べています。違いがはっきり分かります。
脛腓靭帯損傷・断裂・エコー 

重症例の場合、レントゲン撮影で脛骨と腓骨の間にスペースが確認されます。
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分類と治療

Gerberらは理学所見と画像所見から損傷の程度を

Grade1:不安定性なし
Grade2:ある程度不安定性あり
Grade3:明らかな不安定性あり

に分類しました。Grade1,2では脛腓間にストレスのかかる動作は極力控え。しっかりと固定し靭帯の自然修復を促します。Grade3は手術です。金属スクリューで脛骨と腓骨を固定し、術後8~12週程度でスクリュー折損のリスクを考慮して抜去します。

Grade1と2のスポーツ復帰までのロードマップ

受傷~4日(急性期)
・疼痛が強ければ固定・RICE療法・足関節自動運動・疼痛の無い範囲での荷重

4~14日(亜急性期)
・足関節自動運動・交代浴・全荷重・足関節抵抗運動・固有感覚トレーニング

2~4週(治癒期)
・トランポリン・トレッドミル歩行・ジョグとラン・スクワット・ジグザグステップ・8の字走行

4~8週(復帰)
疼痛なく30秒の繰り返し片足飛びができれば復帰を許可。不安があれば装具もしくはテーピングをさせて復帰。

個人的には4週で復帰できれば御の字で、完全復帰には実際もう少し時間(2~3ヶ月)がかかっている印象です。まぁ市民ランナーがロードのランニングで損傷はしないでしょう。もしするとしたらトレイルランニングでしょうか。それ以外では圧倒的にアメフトやラグビーで損傷するため、相当良くならないと全力でプレーできません。

兎に角、普通の足首の捻挫よりも治りにくいのでスポーツへの復帰は慎重に。

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スポーツによる足関節捻挫のうち10~20%が脛腓靭帯結合損傷であるといわれていますが、アメリカンフットボールでは75%、アイスホッケーでは74%と高い発生頻度が報告されています。ちなみに上図のエコー画像もラグビー選手です。

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参考文献
鈴木大輔,寺本篤史,渡邉耕太,名越智.遠位脛腓靭帯の解剖と機能.関節外科 2014;33:15-20
寺本篤史,渡邉耕太,鈴木大輔,山下敏彦.新鮮遠位脛腓靭帯損傷の病態とスポーツ復帰までの治療.関節外科 2014;33:76-80

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前距腓靭帯損傷・足首の捻挫【マラソン・ランニング障害】 

米国では毎日2万人以上の人が足首を捻挫(ねんざ)しています。それだけポピュラーな外傷なだけに『捻挫なんて放っておけばそのうち良くなる』なんて考えている方もいるでしょうが、近年のレビューでは、5~33%は受傷1年後も痛みや不安定感が残存し、3~34%は一年以内に再受傷するとされています。

足首の捻挫では多くの場合、外側の靭帯(外くるぶし周囲)を損傷します。そのうち約85%が前距腓靭帯(ぜんきょひじんたい)の単独損傷で、約20~40%が前距腓靭帯踵腓靭帯(しょうひじんたい)の複合損傷であり、踵腓靭帯の単独損傷や後距腓靭帯(こうきょひじんたい)の損傷は非常にまれです。

前距腓靭帯が破綻した後、さらに強いストレスが加わると交通線維によって連続している踵腓靭帯が複合損傷(巻き添えを食らう)します。

足首の靭帯は意外と知らない内に断裂している事があります。断裂していなくても伸び切ってしまえば靭帯として機能しないので同様です。

例えばプロのバスケットボール選手を10人集めれば5人程は左右どちらかの靭帯を断裂していたり、自分も右足の前距腓靭帯を断裂していますが、いつ断裂したのか記憶が定かではありません。断裂していても普通にランニングはできているので問題もありません。
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※MilnerとSoamesの報告では前距腓靭帯は約50%が二分し、約30%が三分していると述べています。

一般的には下図の様に“内返し”する事により捻挫します。トレイルランニングでは石や木の根っこに着地した際、バスケットボールやバレーボールでは他の選手の足の上に着地した際に捻挫する事が良くあります。
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症状

圧痛が外くるぶしの前下方、下図にあります。軽症であれば歩行は可能ですが、重症では歩行時の痛みが強く跛行(はこう)が見られます。受傷の数時間後から外くるぶしの周囲が腫れてきます。皮下出血斑は受傷直後には確認できず2~5日後に踵や前足部に出現することもあります。

同じ捻挫でも程度により、足首が確認できないくらいパンパンに腫れる方や、見た目にはほとんど腫れが分からない方まで色々です。
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応急処置

腫れの程度にもよりますが、受傷後24時間~72時間は1日4~5回の20分冷却(アイシング)を継続します。寝ている際には不可能なので消炎鎮痛作用のある湿布を貼り炎症物質が作られるのを防ぎます。

またテーピングやサポーターなどでしっかりと圧迫固定することで腫れを抑えます。個人的には圧迫固定が一番重要だと考えています。夜間も行いましょう。サポーターはザムストのA1が一般的です。足首の短いものと長いものがありますが、長い方が安定・安心感がありおすすめです。

特に腫脹や痛みが強く、荷重不能な例では10日間程度の短期間のギプス固定による良い成績が報告されています。

ギプスを外した後にサポーターをするにしても、初めからサポーターをするにしても修復靭帯の強度が再獲得されるまでの6週~3ヶ月は装着を継続します。スポーツ復帰後も再受傷予防のためにしばらくはスポーツ活動中も装着します。
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スポーツ復帰までの期間

アメリカの高校生における調査では、新鮮足関節外側靭帯損傷の52%は受傷後7日以内にスポーツに復帰しており、22日以上を要したのは10%でした。しかしこの調査では全体の83%は靭帯の不全断裂です。

初期の歩行時痛や腫脹が強く、皮下出血斑が見られる症例ではスポーツ復帰に2~3か月を要する例も多数あります。

つまり『捻挫は○○日位で治る』とそんなに単純ではなく、結局は程度の問題です。

適切な治療が行われないと足首の不安定性(グラグラする)が残存したり、可動域制限(正座ができなくなる)などが残ったりします。

30秒ほど片足ジャンプを行って痛みがなければ復帰が可能です。着地の際に痛みがあれば無理のない範囲で段階的に復帰します。

最近の医学論文ではギプスでの長期の固定(6週間)では半数以上に愁訴(患者が訴える症状)が残存し、逆に簡単なサポータでの固定と早期から痛みのない範囲での可動域訓練や運動療法を開始する方が愁訴の残存が少ないと報告されています。

裂離骨折の合併

若年者の場合、靭帯の損傷よりも裂離骨折(れつりこっせつ)の割合が高くなります。小児では、前距腓靭帯付着部の骨端軟骨の強度が足関節外側靭帯の強度に比べて弱いためです。靭帯が断裂するより先に骨(軟骨)が裂離します。

前距腓靭帯は腓骨と距骨の2カ所に付着していますが、腓骨側付着部は靭帯が狭い範囲に集中して付着しているため強い力学的ストレスにさらされているため、裂離骨折のほとんどは腓骨側で起こります。

内返し捻挫による年齢別の腓骨裂離骨折の割合10歳以下(77%)11~14歳(19%)15~18歳(13%)となっており年齢が低いほど靭帯の損傷よりも裂離骨折の割合が高くなります。10歳以下はまず裂離骨折を疑います。

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前距腓靭帯のエコー画像

atfl20170719z.jpg 

正常な前距腓靭帯は腓骨(外くるぶし)と距骨の間に斜めに走行している様子が確認できます。
前距腓靭帯・ATFL・足首捻挫・エコー 

前距腓靭帯が損傷すると新鮮例では靭帯が腫れたり、蛇行したり、陳旧例では何も描出されず確認ができません。下図では骨の上の軟部組織もかなり腫れています。
前距腓靭帯・ATFL・足首捻挫・エコー  

それでは自分の前距腓靭帯を描出してみます。まずは左足。無事に残存しています。
足首の捻挫・前距腓靭帯損傷・断裂 

次は右足。実質部で綺麗に断裂しています。靭帯の腓骨付着部と距骨付着部とも骨の表面が滑らかではなくボコボコ不整像が確認できます。ランニングの着地の際、右足だけオーバープロネーションが強いのですが、もしかして前距腓靭帯の機能不全が原因?
足首の捻挫・前距腓靭帯損傷・断裂 

下図は左足と右足を2画面分割で表示しています。
ATFL tear echo 
靭帯は受傷直後は腫れて肥厚しますが、時間が経過すると菲薄化します。

下図は腓骨(外くるぶし)の裂離骨折のエコー画像です。
腓骨裂離骨折・剥離骨折・捻挫・os subfibulare 
※Os subfibulareは
成長期の捻挫により靭帯付着部の軟骨が裂離し、成長後に骨化した副骨。小児の1%に存在。
os(骨)・sub(下)・fibulare(腓骨側)ラテン語


下図は脛骨(内くるぶし)の裂離骨折のエコー画像です。
三角靭帯損傷・内果裂離骨折・ossubtibiale 
※Os subtibiale。os(骨)・sub(下)・tibiale(脛骨側)ラテン語

下図は距骨の裂離骨折のエコー画像です。
距骨裂離骨折・剥離骨折・捻挫 

レントゲンでは映らない靭帯や軟部組織の損傷はエコー検査で確認可能です。
また炎症の有無もドプラ機能で確認可能です。

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参考文献
篠原靖司.足関節外側靭帯の解剖と機能.関節外科 2014;33:10-14
亀山泰.足部・足関節捻挫の救急対処法.関節外科 2014;33:58-63
山口智志.新鮮足関節外側靭帯損傷の診断と治療.関節外科 2014;33:64-69
笹原潤,高尾昌人.残存靭帯をどう診るか.Orthopaedics 2017;30:7-14
吉村一朗.保存療法と手術療法をどう使い分けるか.Orthopaedics 2017;30:29-33
森本将太,安井洋一,宮本亘.小児足関節外果裂離骨折の評価および治療.Orthopaedics 2017;30:49-54
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市民ランナーが怪我をしやすい部位 

某治療院を受診した市民ランナー直近100名の初診時の受傷部位を集計。
部位人数
腸脛靭帯(ランナー膝)32
ハムストリングス7
後脛骨筋(内くるぶし)6
膝関節(PF関節含む)5
臀部(おしり)4
アキレス腱4
足底腱膜4
前距腓靭帯(足首のねんざ)4
内転筋3
鵞足3
膝窩部3
膝蓋腱2
膝関節水腫2
膝関節滑膜2
腓腹筋(ふくらはぎ)2
腓骨筋(外くるぶし)2
足関節2
総趾伸筋2
鼠径部1
大転子部1
大腿四頭筋腱1
膝関節タナ障害1
膝蓋骨1
膝関節ロッキング1
脛骨疲労骨折1
母趾種子骨1
母趾MTP関節1
長母趾屈筋腱1
第5中足骨1

個人的感想としては3人に1人が腸脛靭帯なのは予想通りの結果です。腸脛靭帯は32名中、右側16、左側13、両側3とそれ程左右差はありません。

直近の100名なので本来なら沢山いるはずの部位でもその時期にたまたま来院がなければ少なく集計されています。

膝の痛みは分類できるものは細かく分類したので少なくみえますが、膝関節周囲の痛みを1つにまとめると腸脛靭帯に次ぐ数だと思います。

ふくらはぎの肉離れなんかは沢山来られている印象でしたが、意外と少ない。

確かに考えてみると市民ランナーよりもテニスやバレーボールで負傷してこられる方が圧倒的に多いです。

これが市民ランナーではなくて、実業団や学生などを対象にするともう少し疲労骨折などが増えるのかも。


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腓骨筋腱炎・腓骨筋腱鞘炎【マラソン・ランニング障害】 

特に足首を捻じった訳でもないのに外くるぶし周囲に痛みや腫れがある、もしくは足首を捻挫(ねんざ)した後に外くるぶし周囲に長引く痛みがある場合、それは腓骨筋腱(ひこつきんけん)の障害かもしれません。主に下の図の○部分に痛みが現れます。

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:腓骨筋腱断裂・腓骨筋腱脱臼・亜脱臼
:腓骨筋腱炎・腱鞘炎・腓骨筋滑車症候群
:短腓骨筋腱付着部症


腓骨筋とは

腓骨筋は下腿の外側の上の方①から始まる長腓骨筋(ちょうひこつきん)と下の方②から始まる短腓骨筋(たんひこつきん)の二つがあります。(細かく言えば第3腓骨筋や人によっては第4腓骨筋(5~21.7%)がある)

長腓骨筋が表層に、短腓骨筋が深層に存在します。それぞれの腱は外くるぶしの後ろを通り短腓骨筋腱は第五中足骨に停止し、長腓骨筋腱は足底を通って内側楔状骨と第一中足骨に停止します。
20170426-1.jpg  20170422-4.jpg

腓骨筋腱は下図の①上腓骨筋支帯(じょうひこつきんしたい)と②下腓骨筋支帯(かひこつきんしたい)と呼ばれるバンドのような組織で押さえつけられています。また腓骨筋支帯を通過する前には③腱鞘(けんしょう)と呼ばれるトンネルの中に入り込み周囲との摩擦を軽減します。
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腓骨筋腱の障害の種類

腓骨筋腱の障害には様々なものがあります。主なものは腓骨筋腱炎・腱鞘炎・腱断裂・脱臼亜脱臼付着部症などでしょうか。

原因は運動時の内返しや外返しの繰り返し動作や足首の捻挫に合併したり、また足首を捻挫した後に関節が緩くなりその状態でランニングを続ける事で発症する事も多いようです。(慢性の足首の外側靭帯不全(関節が緩い)で手術を試行した患者の77%に腓骨筋腱腱鞘炎がみられたとの報告もあります)

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腓骨筋腱炎・腱鞘炎
時に上腓骨筋支帯と下腓骨筋支帯の間に腱の肥厚(一部が膨らむ)がみられます。腱が肥厚すると下腓骨筋支帯の部分で通過障害を起こし痛みが出ます。


腓骨筋腱断裂
ほとんどの場合、短腓骨筋腱に縦断裂が起こります。短腓骨筋腱は骨と長腓骨筋腱に挟まれているために余裕がありません。手術を要した腓骨筋腱障害の患者では短腓骨筋腱では88%に縦断裂がみられたのに対し、長腓骨筋腱では13%であったとの報告もあります。

ただし腓骨筋腱の縦断裂は日本人の屍体標本による検討では、112足中42足(37.5%)に縦断裂を含めた短腓骨筋腱の病変を認めたとの報告もあるため、短腓骨筋の損傷は臨床症状がなくても比較的高率に存在するようです。

腓骨筋腱脱臼・亜脱臼
ほとんどの場合、長腓骨筋が外くるぶしを後ろから前へ脱臼します。頻度は非常にまれです。また常時脱臼しているわけではないので見逃されやすいのですが、足首を甲側に曲げた状態で外くるぶしの後ろから指で前方に腱を押すと脱臼が再現できることもあります。
20170422-7.jpg 

20170426-2.jpg  

腓骨筋腱障害の症状

外くるぶし周囲の疼痛
圧痛(押すと痛い)
腫脹(腫れている)
着地動作時痛
引っかかり感
脱臼感
内返しのストレスで痛みがある
運動をした翌日の朝一番の痛み(first-step pain)

検査

MRIやエコー検査が有用です。ただしほとんどの場合は症状や所見で判断できます。
その他、徒手検査では下記のものが提唱されています。

Peroneal tunnel compression test
患者を診察台に腰かけ下肢を下垂させ、検者の母指で上腓骨筋支帯を圧迫し自動背屈・外反させ疼痛を誘発するテストで、轢音も触知される。

鑑別すべき疾患としては前距腓靭帯損傷・踵腓靭帯損傷・二分靭帯損傷・腓骨や距骨剥離骨折・第5中足骨骨折・足根洞症候群・踵骨前方突起骨折・踵骨疲労骨折などでしょうか。

保存治療

まずは安静が必要です。(できないランナーが多そうですが)しかし痛みを我慢して運動を続けると確実に悪化します。オフシーズンであれば思い切って2~6週くらい休足しましょう。その間はエアロバイクなど痛みがでない運動で心肺機能を維持するのがおすすめです。また腓骨筋が凝り固まっている場合はマッサージで緩めます。

症状が強い場合には装具やギプスによる固定が必要な場合もあります。

また原因がはっきりしている場合は原因を取り除きます。例えば不整地でのランニング、傾斜部でのランニング、シューズの不適合(幅の狭い窮屈なシューズ)など。シューズの外側の減りが早い場合にはインソールなどで調整します。

一概には言えませんが土踏まずが内側に倒れ込むプロネーションではなく、その逆のサピネーションの人に多く発症する傾向にあるので、外側を高くしたインソールなどが作られます。
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手術

長期間の放置例や狭窄性腱鞘炎、縦断裂をきたして遷延化すると手術適応となる事が多くなります。手術では狭窄性腱鞘炎であれば下腓骨筋支帯を切開したり肥大した腱の部分を切除、縦断裂では変性した腱の部分を切除し断裂部を縫合し管状に形を整えたりします。

一般に、適切に手術療法が行われれば、術後の成績は非常に良好とされています。スポーツマンで手術的に治療した患者(49例)のうち、87%がスポーツ活動に復帰。復帰までの平均は3.49ヶ月。

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腓骨筋腱脱臼・亜脱臼の場合は新鮮例(急性)でさえ4~6週間のギプス固定での治癒率は50%で、確実なスポーツ復帰を目指す場合や陳旧例(慢性)では手術が必要になる事が多いようです。

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西院かんな整骨院
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参考文献

杉田直樹,立花陽明,坂口勝信.足部・足関節の捻挫で生ずる腱傷害.関節外科 2014;33:38-43
窪田誠.腓骨筋腱損傷・障害の診断と治療.関節外科 2017;36:66-71
鈴木朱美,石垣大介,高木理彰.腓骨筋腱脱臼の診断と治療.関節外科 2017;36:72-81
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