TOP | NEXT

膝蓋下脂肪体炎・ホッファ病【マラソン・ランニング障害】 

マラソン・ランニングをしていて膝のお皿(膝蓋骨)の下あたりに鋭い痛みを感じた場合、それはもしかしたら膝蓋下脂肪体炎(しつがいかしぼうたいえん)かもしれません。

膝蓋骨(しつがいこつ)の下の障害で有名なのは膝蓋腱炎(ジャンパー膝)やオスグット病ですが、少し知名度の低い障害に膝蓋下脂肪体炎があります。

膝蓋腱炎の場合は主に青丸●部分に痛みがありますが、膝蓋下脂肪体炎の場合は赤丸●部分に痛みがあります。痛みの場所は近いのですが、痛みの出る動作などに少し違いがあります。

IFP20180228-7.jpg 
※鑑別診断には膝蓋腱炎・オスグッド病・変形性膝関節症・膝蓋大腿関節症・半月板損傷・前後十字靭帯断裂・離断性骨軟骨炎・滑液包炎・突発性骨壊死・脛骨高原骨折・鵞足炎・骨軟部腫瘍、その他がありますので素人判断は要注意です。


膝蓋下脂肪体とは

膝蓋骨の下にある膝蓋腱のさらに奥深くにある脂肪の組織です。脂肪と痛みって関係があるの?と思われる方も多いでしょうが、実は脂肪組織は痛みの原因になる事が多いのです。
IFP20180228-5.jpg 

蛇足ですが、膝関節の中の組織の痛みの敏感度を表したのが下図です。色が濃い方が痛みを強く感じるのですが、膝蓋下脂肪体は真っ黒(4:Severe pain=激痛)で痛みをとても強く感じる組織です。逆に軟骨や半月板は色が薄くあまり痛みを感じません。

実はこれ、海外のDye先生が麻酔下で自分の膝の組織を一つずつ金属の棒で押してもらい痛みの程度を調べた有名なものです。膝蓋下脂肪体を押された時はさぞ痛かったでしょう。。。
IFP20180228-4.jpg 

膝蓋下脂肪体炎・ホッファ病(Hoffa)とは

何らかの原因(過度な運動や打撲などの外傷)で膝蓋下脂肪体に微少出血・炎症が起こります。炎症により本来は弾力がありやわらかい脂肪体が結合組織性肥大を起こし線維化するために柔軟性が失われ硬くなります。簡単に言えば絹ごし豆腐が木綿豆腐に変わるとでも言いましょうか。

本来なら脂肪体は膝を伸ばすと前方へ移動するのですが、硬くなった脂肪体は膝を伸ばしても前方に移動できなくなり、伸ばし切った際に後方の関節内(大腿骨と脛骨の間や大腿骨と膝蓋骨の間)に挟み込まれる事で鋭い痛みを感じるようになります。

MRIでは脂肪体の炎症が確認できます。
IFP20180228-3.jpg 


膝蓋下脂肪体炎の症状

・膝を伸ばし切った時に膝蓋骨の下に鋭い痛みを感じます
・膝にわずかな伸展制限(伸ばし切れない)がみられます
・膝を伸ばした状態で押すと痛みがありますが、曲げた状態で押すと痛みが消失・減弱します
・膝蓋下脂肪体の肥大が強いと膝蓋骨の下がぷくっと膨れています
IFP20180228-6.jpg 


Hoffa sign(自分で確認する場合)

椅子に座って膝を曲げた状態で両サイドから膝蓋下脂肪体を押し、そのままの状態で膝を伸ばしていった際に痛みがあれば陽性になります。動画はYoutubeで確認できます。
(動画)※リンク切れ確認していません


エコー(超音波)検査で膝蓋下脂肪体を確認する

エコーでは下図の様に膝蓋下脂肪体を描出できます。
IFP20180228-1.jpg 

エコーには組織が炎症を起こしているかどうかを確認するドプラと呼ばれる機能があります。ドプラ機能では炎症があると画面上に赤い点滅が表示されます。下の動画は同一人物の健側と患側ですが、痛みのある方は膝蓋下脂肪体に炎症反応が確認できます。




治療

動きの悪くなった膝蓋骨や硬くなった脂肪体を徒手的に動かしていきます。なかなか自分ではできませんがイメージ的にはこの動画※音あり(Youtube)の様な感じです。

また長座位で膝の下に丸めたタオルを置いて、太ももの前の筋肉を収縮させて押し付けていくリハビリ(パテラセッティング)も有効です。
ps20180228.jpg 

それでも痛みが改善しない難治性のものには膝蓋下脂肪体に直接ステロイド+局所麻酔薬を注射したり関節鏡による部分切除をする事もあるようです。

お役に立ちましたら拍手ボタンのクリックをお願いします。

京都市_中京区_右京区_下京区
マラソン・ランニング・ジョギング障害!
00:00 ランニング障害・勉強 | (0) | (0) | 


二分靭帯損傷・踵骨前方突起骨折【マラソン・ランニング障害】 

ロードを走っていて足首を捻挫(ねんざ)する残念なランナーはそれ程いないと思いますが、トレイルを走っていると足首を捻挫することはあると思います。足首の捻挫では一般的に前距腓靭帯(ぜんきょひじんたい)を損傷することが多いのですが、それとは別の二分靭帯(にぶんじんたい)と呼ばれる少しマイナーな靭帯を損傷することもあります。

圧痛の部位が微妙に違います。
BFL20171007-1.jpg 

二分靭帯はその名の通り、二つに分かれている靭帯です。踵骨→舟状骨をつなぐ踵舟靭帯(しょうしゅうじんたい)と踵骨→立方骨をつなぐ踵立方靭帯(しょうりっぽうじんたい)の2つをあわせて二分靭帯と呼びます。

BFL20171007-8.jpg 

BFL20171007-2.jpg 

BFL20171007-2b.jpg  

巷では前距腓靭帯の損傷に比べ二分靭帯の損傷は軽視されていて『放っておいてもそのうち治る』などと言われることもある可哀そうな靭帯ですが、実は場合によっては完治までに長期を要します。

当然、二分靭帯が単独で損傷する場合もありますが、前距腓靭帯やその他の靭帯と一緒に損傷する場合もあります。

まぁ二分靭帯の単独損傷であれば、テーピングやサポーターなどで固定し安静にすれば1~3週程度で痛みは軽減・消失するでしょう。

踵骨前方突起骨折

内返し捻挫の際に二分靭帯が断裂するのではなく、靭帯に引っ張られて踵骨前方突起しょうこつぜんぽうとっき)と呼ばれる骨の一部が裂離骨折を起こすことがあります。
BFL20171007-6.jpg 

圧痛は二分靭帯と同じところにありますが、この場合は単なる二分靭帯損傷と判断して放置していると症状が長期化することがあります。下図黒○の部分が踵骨前方突起でそこに赤のラインの二分靭帯が付着します。
BFL20171007-4.jpg 
BFL20171007-5.jpg 

実は踵骨前方突起骨折があったとしても、レントゲン検査では骨片が他の骨と重なるためにかなりの確率で見落とされてしまいます。CT検査をすれば確実に診断されますが、捻挫でいきなりCTを撮影することは稀です。痛みが半年~1年くらい続き、少しおかしいなと言うことでCTを撮影すると踵骨前方突起骨折が見つかることもあります。

BFL20171007-7.jpg 

超音波エコー検査では比較的簡単に描出できます。

同一人物の健側
二分靭帯損傷・踵骨前方突起骨折・京都・病院・整骨院・接骨院 

同一人物の患側
二分靭帯損傷・踵骨前方突起骨折・中京区・右京区・左京区・上京区・下京区・南区・伏見区・病院・整骨院・接骨院 

健側と患側
二分靭帯損傷・踵骨前方突起骨折・京都・検査・治療 

踵骨前方突起骨折の動画


上記の方も初期にレントゲンを撮影されたそうですが骨折はないとの診断を受けました。受傷後3週間経過してもやけに痛みが強いなということでエコー検査を受けました。ちなみにこの方は前距腓靭帯の損傷と腓骨の裂離骨折もありました。強く足首を捻じると場合によっては複数個所を骨折することもあるんですね。
echobfl20171007-4.jpg 

受傷後、比較的早期に踵骨前方突起骨折が見つかればギプスでの固定を行い骨癒合を目指します。発見が遅れた場合にはサポーターなどでの固定が行われ痛みの軽減・消失を目指します。時に骨が癒合せず痛みが残存することがあり、その場合には手術による骨接合術や骨片摘出術が行われることもあります。骨癒合しなかった人すべてに痛みが残存するわけではありません。

インターネットで簡単に情報を得ることができるようになってはいますが、二分靭帯は基本的に安静にして湿布を貼っておけばそのうち治るという情報を鵜呑みにして放置するもなかなか痛みが引かない場合は踵骨前方突起骨折やその他の外傷・障害が隠れているかもしれませんのでお気をつけ下さい。

お役に立ちましたら拍手ボタンのクリックをお願いします。

西院かんな整骨院
京都市_中京区_右京区_下京区
マラソン・ランニング・ジョギング障害!

00:00 ランニング障害・勉強 | (0) | (0) | 


大腿四頭筋の肉離れ【マラソン・ランニング障害】 

急激なダッシュ動作や体勢が崩れた際の踏ん張り動作で太ももの前面に痛みを感じたらそれは大腿四頭筋(だいたいしとうきん)の肉離れかもしれません。

太ももの前面にある大腿四頭筋は4つの筋肉の総称です。内側に内側広筋(ないそくこうきん)・外側に外側広筋(がいそくこうきん)・中央の浅層に大腿直筋(だいたいちょっきん)・中央の深層に中間広筋(ちゅうかんこうきん)があります。

この中で肉離れを起こすのはほとんどの場合、中央の浅層にある大腿直筋です。※二関節筋のため

quad20180328.jpg 

quad20170820-2.jpg 
エコーでは下図の様に描出されます。
長軸像(縦に見ている)
quad20170820-12.jpg 

短軸像(輪切りに見ている)
quad20170820-13.jpg 

症状


圧痛(押すと痛い)
突っ張り感
階段昇降時痛
ストレッチ痛
ランニング痛
しゃがみ動作時痛

重症度


腹臥位(お腹が下)で痛みのない方の膝と痛みのある方の膝を交互に曲げて、膝関節の動きにどれだけ制限があるかで判断できます。通常は角度計で計測しますが、無い場合は踵と臀部の距離(HBD:heel buttock distance)が簡便です。
quad20170820-4.jpg 


また太ももの中央に圧痛があれば比較的軽症の場合が多く、股関節や膝関節に近づく程に中等症~重症、もしくは治癒に時間がかかる事が多いです。中央の筋腹は血流が良く、筋肉と腱の移行部はやや血流が悪く、腱付着部はさらに血流が悪いためです。
quad20170820-3.jpg 

治癒・復帰までの期間


軽症で1~2週間・中等症で4~6週間・重症で3~6ヶ月。あくまでも目安です。


大腿直筋肉離れのエコー画像

筋線維(筋周膜)が途中で途絶しています。断裂部の周囲が明るく高エコーに描出されているのは周囲にじわじわと出血が広がっているためです。まずは長軸像です。
大腿四頭筋・大腿直筋・太もも肉離れ・京都・整骨院・接骨院 
 
次に別の症例の短軸像です。大腿直筋内に低エコー像が確認できます。
太もも・にくばなれ・ももかん 

次も別の症例の短軸像です。大腿直筋内に低エコー像が確認できます。

大腿直筋肉離れ20170824b 

一般的に肉離れを起こした筋肉は腫れて大きくなります。
大腿直筋肉離れ20170824 

動画



大腿部の打撲・挫傷


トレイルランニングで転倒し岩や木に太ももの前面を強打したり、コンタクトスポーツで相手選手の膝が入ったり(通称:ももかん)すると大腿四頭筋が損傷します。肉離れの時と違い、大腿骨のすぐ上にある中間広筋が損傷する事が多いです。皮膚の上から圧がかかると浅層の大腿直筋ではなく、深層の中間広筋が大腿骨に強く押し付けられ、時に筋肉内に血腫が確認できます。

エコーでは大腿部(この場合は外側広筋)に黒い血腫が確認できます。下図(長軸像)は患側と健側を並べています。
大腿部・太もも・打撲・痛み・京都 

下図は大腿部を輪切り(短軸像)にしたエコー画像です。大腿骨の直上に大きな血腫が広がっています。
大腿部・太もも・打撲・痛み・京都 

骨化性筋炎


打撲などで筋肉が損傷すると出血し時に血の塊である血腫(けっしゅ)ができます。その状態で十分な安静を取らずに不必要な刺激が加わると血腫内にカルシウムが異常に集積して石灰化が生じて骨が形成されます。本来ないはずの場所に骨ができるので大腿部に痛みや腫れ、関節の可動域制限(膝が曲げられない)などの症状が見られます。無理のない範囲で段階的にスポーツ復帰する事で徐々に小さくなります。(4~6ヶ月)

エコーでは骨化性筋炎は骨のすぐ直上に白い線として確認できます。そこでエコーが跳ね返されるので本来は描出されるはずのその下にある骨の輪郭が途切れます。
骨化性筋炎・大腿部・太もも・痛み 

骨化性筋炎・大腿部・太もも・痛み 

レントゲンでは下図の様に確認できます。受傷から最初の骨化が起こるまでに約1~2週間ですが、レントゲンで確認できるまでには約1ヶ月を要します。しかしエコーでは比較的早期に確認可能です。
quad20170820-9.jpg 

お役に立ちましたら拍手ボタンのクリックをお願いします。

西院かんな整骨院
京都市|中京区|右京区|下京区|
マラソン・ランニング・ジョギング障害!

00:00 ランニング障害・勉強 | (0) | (0) | 


前下脛腓靭帯損傷・足首の捻挫【マラソン・ランニング障害】 

一般的に足首を捻挫すると、①前距腓靭帯(ぜんきょひじんたい)と呼ばれる靭帯を損傷・断裂します。しかし稀に『ただ捻挫しただけなのに中々治らない』場合、②前下脛腓靭帯(ぜんかけいひじんたい)と呼ばれる靭帯を損傷・断裂しているかもしれません。前下脛腓靭帯損傷では骨折を合併している事も多いので注意が必要です。

一般的な捻挫・前距腓靭帯損傷は
こちらのページへ。

※鑑別として、二分靭帯損傷、腓骨筋腱損傷・脱臼・腱鞘炎、踵骨前方突起骨折、距骨外側突起骨折、足根洞症候群、距骨骨軟骨損傷、衝突性外骨腫etc.があるので、安易な素人判断は危険です。

足首には脛骨(けいこつ)腓骨(ひこつ)と呼ばれる2つの骨がありますが、それらを結合しているのが脛腓靭帯です。脛腓靭帯は前にも後ろにもありますが、一般的に損傷するのは前下脛腓靭帯(以後は脛腓靭帯)です。

run-aitfl20170715b.jpg 

run-aitfl20170715a.jpg

痛みの出る場所

指で押した時の圧痛は前距腓靭帯の損傷では外くるぶしの前下方の赤丸にありますが、脛腓靭帯の損傷では外くるぶしの前上方の青丸にあります。脛腓靭帯の損傷は前距腓靭帯の損傷よりも疼痛が出やすい部位として知られています。
※靭帯結合(syndesmosis)は疼痛の出やすい部分。

脛腓靭帯の深層は豊富な脂肪組織があり、大きな血管が走っており、脂肪組織に分布する侵害受容器やこれらの血管および伴走している神経が傷つき、痛みが出ると考えられています。
run-aitfl20170715c.jpg 

痛みの出る動きと徒手検査

前距腓靭帯の損傷では足首を底屈(下げる)や内返し時に痛みが出るのに対して、脛腓靭帯の損傷では足首を背屈(上げる)と痛みが出ます。足首を上に上げると脛骨と腓骨に離開する力が働き脛腓靭帯が刺激されます。

前距腓靭帯の損傷では普通に真っ直ぐ歩くだけならそれ程靭帯にストレスがかからない為に痛みが出ません。しかし脛腓靭帯の損傷では真っ直ぐ歩く、しゃがみ動作、階段昇降動作など足首が曲がるだけで脛腓靭帯に常にストレスがかかり続けるのでに中々治癒しにくいとされています。

脛腓靭帯の損傷を判断する一つの方法として外旋ストレステスト(External rotation test)があります。下の図の様に足首を回旋させると脛骨と腓骨の間が離開して脛腓靭帯にストレスがかかり痛みが誘発されます。

患者を椅子に座らせ膝を90°屈曲位にし、検者は片方の手で下腿の近位を把持し、もう一方の手で足関節中間位で足部を外旋させます。
run-aitfl20170715d.jpg 

脛腓靭帯のエコー画像

脛腓靭帯は比較的太いが、薄い帯状の靭帯です。下のエコー像は下腿部を輪切りにした像で、画面の上がすね側、画面の下がふくらはぎ側です。矢印の正常な脛腓靭帯が2つの骨を橋渡しするように走行しています。
前下脛腓靭帯損傷・AITFL・足首の捻挫・エコー 

下図は脛腓靭帯損傷のエコー画像です。靭帯が上手く描出されず低エコーになっています。
前下脛腓靭帯損傷・AITFL・足首の捻挫・エコー 

下図は同一人物の良い方の足と悪い方の足を並べています。違いがはっきり分かります。
脛腓靭帯損傷・断裂・エコー 

重症例の場合、レントゲン撮影で脛骨と腓骨の間にスペースが確認されます。
run-aitfl20170715e.jpg 

分類と治療

Gerberらは理学所見と画像所見から損傷の程度を

Grade1:不安定性なし
Grade2:ある程度不安定性あり
Grade3:明らかな不安定性あり

に分類しました。Grade1,2では脛腓間にストレスのかかる動作は極力控え。しっかりと固定し靭帯の自然修復を促します。Grade3は手術です。金属スクリューで脛骨と腓骨を固定し、術後8~12週程度でスクリュー折損のリスクを考慮して抜去します。

Grade1と2のスポーツ復帰までのロードマップ

受傷~4日(急性期)
・疼痛が強ければ固定・RICE療法・足関節自動運動・疼痛の無い範囲での荷重

4~14日(亜急性期)
・足関節自動運動・交代浴・全荷重・足関節抵抗運動・固有感覚トレーニング

2~4週(治癒期)
・トランポリン・トレッドミル歩行・ジョグとラン・スクワット・ジグザグステップ・8の字走行

4~8週(復帰)
疼痛なく30秒の繰り返し片足飛びができれば復帰を許可。不安があれば装具もしくはテーピングをさせて復帰。

個人的には4週で復帰できれば御の字で、完全復帰には実際もう少し時間(2~3ヶ月)がかかっている印象です。まぁ市民ランナーがロードのランニングで損傷はしないでしょう。もしするとしたらトレイルランニングでしょうか。それ以外では圧倒的にアメフトやラグビーで損傷するため、相当良くならないと全力でプレーできません。

兎に角、普通の足首の捻挫よりも治りにくいのでスポーツへの復帰は慎重に。

run-aitfl20170715f.jpg 

スポーツによる足関節捻挫のうち10~20%が脛腓靭帯結合損傷であるといわれていますが、アメリカンフットボールでは75%、アイスホッケーでは74%と高い発生頻度が報告されています。ちなみに上図のエコー画像もラグビー選手です。

お役に立ちましたら拍手ボタンのクリックをお願いします。

京都市|中京区|右京区|下京区|
マラソン・ランニング・ジョギング障害!

参考文献
鈴木大輔,寺本篤史,渡邉耕太,名越智.遠位脛腓靭帯の解剖と機能.関節外科 2014;33:15-20
寺本篤史,渡邉耕太,鈴木大輔,山下敏彦.新鮮遠位脛腓靭帯損傷の病態とスポーツ復帰までの治療.関節外科 2014;33:76-80

00:00 ランニング障害・勉強 | (0) | (0) | 


前距腓靭帯損傷・足首の捻挫【マラソン・ランニング障害】 

米国では毎日2万人以上の人が足首を捻挫(ねんざ)しています。それだけポピュラーな外傷なだけに『捻挫なんて放っておけばそのうち良くなる』なんて考えている方もいるでしょうが、近年のレビューでは、5~33%は受傷1年後も痛みや不安定感が残存し、3~34%は一年以内に再受傷するとされています。

足首の捻挫では多くの場合、外側の靭帯(外くるぶし周囲)を損傷します。そのうち約85%が前距腓靭帯(ぜんきょひじんたい)の単独損傷で、約20~40%が前距腓靭帯踵腓靭帯(しょうひじんたい)の複合損傷であり、踵腓靭帯の単独損傷や後距腓靭帯(こうきょひじんたい)の損傷は非常にまれです。

前距腓靭帯が破綻した後、さらに強いストレスが加わると交通線維によって連続している踵腓靭帯が複合損傷(巻き添えを食らう)します。

足首の靭帯は意外と知らない内に断裂している事があります。断裂していなくても伸び切ってしまえば靭帯として機能しないので同様です。

例えばプロのバスケットボール選手を10人集めれば5人程は左右どちらかの靭帯を断裂していたり、自分も右足の前距腓靭帯を断裂していますが、いつ断裂したのか記憶が定かではありません。断裂していても普通にランニングはできているので問題もありません。
atfl2017-1.jpg 
※MilnerとSoamesの報告では前距腓靭帯は約50%が二分し、約30%が三分していると述べています。

一般的には下図の様に“内返し”する事により捻挫します。トレイルランニングでは石や木の根っこに着地した際、バスケットボールやバレーボールでは他の選手の足の上に着地した際に捻挫する事が良くあります。
atfl2017-2.jpg 

症状

圧痛が外くるぶしの前下方、下図にあります。軽症であれば歩行は可能ですが、重症では歩行時の痛みが強く跛行(はこう)が見られます。受傷の数時間後から外くるぶしの周囲が腫れてきます。皮下出血斑は受傷直後には確認できず2~5日後に踵や前足部に出現することもあります。

同じ捻挫でも程度により、足首が確認できないくらいパンパンに腫れる方や、見た目にはほとんど腫れが分からない方まで色々です。
atfltenderness20170719.jpg 

応急処置

腫れの程度にもよりますが、受傷後24時間~72時間は1日4~5回の20分冷却(アイシング)を継続します。寝ている際には不可能なので消炎鎮痛作用のある湿布を貼り炎症物質が作られるのを防ぎます。

またテーピングやサポーターなどでしっかりと圧迫固定することで腫れを抑えます。個人的には圧迫固定が一番重要だと考えています。夜間も行いましょう。サポーターはザムストのA1が一般的です。足首の短いものと長いものがありますが、長い方が安定・安心感がありおすすめです。

特に腫脹や痛みが強く、荷重不能な例では10日間程度の短期間のギプス固定による良い成績が報告されています。

ギプスを外した後にサポーターをするにしても、初めからサポーターをするにしても修復靭帯の強度が再獲得されるまでの6週~3ヶ月は装着を継続します。スポーツ復帰後も再受傷予防のためにしばらくはスポーツ活動中も装着します。
zamsta1atfltear.jpg 


スポーツ復帰までの期間

アメリカの高校生における調査では、新鮮足関節外側靭帯損傷の52%は受傷後7日以内にスポーツに復帰しており、22日以上を要したのは10%でした。しかしこの調査では全体の83%は靭帯の不全断裂です。

初期の歩行時痛や腫脹が強く、皮下出血斑が見られる症例ではスポーツ復帰に2~3か月を要する例も多数あります。

つまり『捻挫は○○日位で治る』とそんなに単純ではなく、結局は程度の問題です。

適切な治療が行われないと足首の不安定性(グラグラする)が残存したり、可動域制限(正座ができなくなる)などが残ったりします。

30秒ほど片足ジャンプを行って痛みがなければ復帰が可能です。着地の際に痛みがあれば無理のない範囲で段階的に復帰します。

最近の医学論文ではギプスでの長期の固定(6週間)では半数以上に愁訴(患者が訴える症状)が残存し、逆に簡単なサポータでの固定と早期から痛みのない範囲での可動域訓練や運動療法を開始する方が愁訴の残存が少ないと報告されています。

裂離骨折の合併

若年者の場合、靭帯の損傷よりも裂離骨折(れつりこっせつ)の割合が高くなります。小児では、前距腓靭帯付着部の骨端軟骨の強度が足関節外側靭帯の強度に比べて弱いためです。靭帯が断裂するより先に骨(軟骨)が裂離します。

前距腓靭帯は腓骨と距骨の2カ所に付着していますが、腓骨側付着部は靭帯が狭い範囲に集中して付着しているため強い力学的ストレスにさらされているため、裂離骨折のほとんどは腓骨側で起こります。

内返し捻挫による年齢別の腓骨裂離骨折の割合10歳以下(77%)11~14歳(19%)15~18歳(13%)となっており年齢が低いほど靭帯の損傷よりも裂離骨折の割合が高くなります。10歳以下はまず裂離骨折を疑います。

atfl2017-3.jpg 

前距腓靭帯のエコー画像

atfl20170719z.jpg 

正常な前距腓靭帯は腓骨(外くるぶし)と距骨の間に斜めに走行している様子が確認できます。
前距腓靭帯・ATFL・足首捻挫・エコー 

前距腓靭帯が損傷すると新鮮例では靭帯が腫れたり、蛇行したり、陳旧例では何も描出されず確認ができません。下図では骨の上の軟部組織もかなり腫れています。
前距腓靭帯・ATFL・足首捻挫・エコー  

それでは自分の前距腓靭帯を描出してみます。まずは左足。無事に残存しています。
足首の捻挫・前距腓靭帯損傷・断裂 

次は右足。実質部で綺麗に断裂しています。靭帯の腓骨付着部と距骨付着部とも骨の表面が滑らかではなくボコボコ不整像が確認できます。ランニングの着地の際、右足だけオーバープロネーションが強いのですが、もしかして前距腓靭帯の機能不全が原因?
足首の捻挫・前距腓靭帯損傷・断裂 

下図は左足と右足を2画面分割で表示しています。
ATFL tear echo 
靭帯は受傷直後は腫れて肥厚しますが、時間が経過すると菲薄化します。

下図は腓骨(外くるぶし)の裂離骨折のエコー画像です。
腓骨裂離骨折・剥離骨折・捻挫・os subfibulare 
※Os subfibulareは
成長期の捻挫により靭帯付着部の軟骨が裂離し、成長後に骨化した副骨。小児の1%に存在。
os(骨)・sub(下)・fibulare(腓骨側)ラテン語


下図は脛骨(内くるぶし)の裂離骨折のエコー画像です。
三角靭帯損傷・内果裂離骨折・ossubtibiale 
※Os subtibiale。os(骨)・sub(下)・tibiale(脛骨側)ラテン語

下図は距骨の裂離骨折のエコー画像です。
距骨裂離骨折・剥離骨折・捻挫 

レントゲンでは映らない靭帯や軟部組織の損傷はエコー検査で確認可能です。
また炎症の有無もドプラ機能で確認可能です。

お役に立ちましたら拍手ボタンのクリックをお願いします。

京都市|中京区|右京区|下京区|
マラソン・ランニング・ジョギング障害!

参考文献
篠原靖司.足関節外側靭帯の解剖と機能.関節外科 2014;33:10-14
亀山泰.足部・足関節捻挫の救急対処法.関節外科 2014;33:58-63
山口智志.新鮮足関節外側靭帯損傷の診断と治療.関節外科 2014;33:64-69
笹原潤,高尾昌人.残存靭帯をどう診るか.Orthopaedics 2017;30:7-14
吉村一朗.保存療法と手術療法をどう使い分けるか.Orthopaedics 2017;30:29-33
森本将太,安井洋一,宮本亘.小児足関節外果裂離骨折の評価および治療.Orthopaedics 2017;30:49-54
00:00 ランニング障害・勉強 | (0) | (0) | 


市民ランナーが怪我をしやすい部位 

某治療院を受診した市民ランナー直近100名の初診時の受傷部位を集計。
部位人数
腸脛靭帯(ランナー膝)32
ハムストリングス7
後脛骨筋(内くるぶし)6
膝関節(PF関節含む)5
臀部(おしり)4
アキレス腱4
足底腱膜4
前距腓靭帯(足首のねんざ)4
内転筋3
鵞足3
膝窩部3
膝蓋腱2
膝関節水腫2
膝関節滑膜2
腓腹筋(ふくらはぎ)2
腓骨筋(外くるぶし)2
足関節2
総趾伸筋2
鼠径部1
大転子部1
大腿四頭筋腱1
膝関節タナ障害1
膝蓋骨1
膝関節ロッキング1
脛骨疲労骨折1
母趾種子骨1
母趾MTP関節1
長母趾屈筋腱1
第5中足骨1

個人的感想としては3人に1人が腸脛靭帯なのは予想通りの結果です。腸脛靭帯は32名中、右側16、左側13、両側3とそれ程左右差はありません。

直近の100名なので本来なら沢山いるはずの部位でもその時期にたまたま来院がなければ少なく集計されています。

膝の痛みは分類できるものは細かく分類したので少なくみえますが、膝関節周囲の痛みを1つにまとめると腸脛靭帯に次ぐ数だと思います。

ふくらはぎの肉離れなんかは沢山来られている印象でしたが、意外と少ない。

確かに考えてみると市民ランナーよりもテニスやバレーボールで負傷してこられる方が圧倒的に多いです。

これが市民ランナーではなくて、実業団や学生などを対象にするともう少し疲労骨折などが増えるのかも。


にほんブログ村
22:30 ランニング障害・勉強 | (0) | (0) | 


腓骨筋腱炎・腓骨筋腱鞘炎【マラソン・ランニング障害】 

特に足首を捻じった訳でもないのに外くるぶし周囲に痛みや腫れがある、もしくは足首を捻挫(ねんざ)した後に外くるぶし周囲に長引く痛みがある場合、それは腓骨筋腱(ひこつきんけん)の障害かもしれません。主に下の図の○部分に痛みが現れます。

20170422-1.jpg 
:腓骨筋腱断裂・腓骨筋腱脱臼・亜脱臼
:腓骨筋腱炎・腱鞘炎・腓骨筋滑車症候群
:短腓骨筋腱付着部症


腓骨筋とは

腓骨筋は下腿の外側の上の方①から始まる長腓骨筋(ちょうひこつきん)と下の方②から始まる短腓骨筋(たんひこつきん)の二つがあります。(細かく言えば第3腓骨筋や人によっては第4腓骨筋(5~21.7%)がある)

長腓骨筋が表層に、短腓骨筋が深層に存在します。それぞれの腱は外くるぶしの後ろを通り短腓骨筋腱は第五中足骨に停止し、長腓骨筋腱は足底を通って内側楔状骨と第一中足骨に停止します。
20170426-1.jpg  20170422-4.jpg

腓骨筋腱は下図の①上腓骨筋支帯(じょうひこつきんしたい)と②下腓骨筋支帯(かひこつきんしたい)と呼ばれるバンドのような組織で押さえつけられています。また腓骨筋支帯を通過する前には③腱鞘(けんしょう)と呼ばれるトンネルの中に入り込み周囲との摩擦を軽減します。
20170422-3.jpg 

腓骨筋腱の障害の種類

腓骨筋腱の障害には様々なものがあります。主なものは腓骨筋腱炎・腱鞘炎・腱断裂・脱臼亜脱臼付着部症などでしょうか。

原因は運動時の内返しや外返しの繰り返し動作や足首の捻挫に合併したり、また足首を捻挫した後に関節が緩くなりその状態でランニングを続ける事で発症する事も多いようです。(慢性の足首の外側靭帯不全(関節が緩い)で手術を試行した患者の77%に腓骨筋腱腱鞘炎がみられたとの報告もあります)

20170422-5.jpg 
腓骨筋腱炎・腱鞘炎
時に上腓骨筋支帯と下腓骨筋支帯の間に腱の肥厚(一部が膨らむ)がみられます。腱が肥厚すると下腓骨筋支帯の部分で通過障害を起こし痛みが出ます。


腓骨筋腱断裂
ほとんどの場合、短腓骨筋腱に縦断裂が起こります。短腓骨筋腱は骨と長腓骨筋腱に挟まれているために余裕がありません。手術を要した腓骨筋腱障害の患者では短腓骨筋腱では88%に縦断裂がみられたのに対し、長腓骨筋腱では13%であったとの報告もあります。

ただし腓骨筋腱の縦断裂は日本人の屍体標本による検討では、112足中42足(37.5%)に縦断裂を含めた短腓骨筋腱の病変を認めたとの報告もあるため、短腓骨筋の損傷は臨床症状がなくても比較的高率に存在するようです。

腓骨筋腱脱臼・亜脱臼
ほとんどの場合、長腓骨筋が外くるぶしを後ろから前へ脱臼します。頻度は非常にまれです。また常時脱臼しているわけではないので見逃されやすいのですが、足首を甲側に曲げた状態で外くるぶしの後ろから指で前方に腱を押すと脱臼が再現できることもあります。
20170422-7.jpg 

20170426-2.jpg  

腓骨筋腱障害の症状

外くるぶし周囲の疼痛
圧痛(押すと痛い)
腫脹(腫れている)
着地動作時痛
引っかかり感
脱臼感
内返しのストレスで痛みがある
運動をした翌日の朝一番の痛み(first-step pain)

検査

MRIやエコー検査が有用です。ただしほとんどの場合は症状や所見で判断できます。
その他、徒手検査では下記のものが提唱されています。

Peroneal tunnel compression test
患者を診察台に腰かけ下肢を下垂させ、検者の母指で上腓骨筋支帯を圧迫し自動背屈・外反させ疼痛を誘発するテストで、轢音も触知される。

鑑別すべき疾患としては前距腓靭帯損傷・踵腓靭帯損傷・二分靭帯損傷・腓骨や距骨剥離骨折・第5中足骨骨折・足根洞症候群・踵骨前方突起骨折・踵骨疲労骨折などでしょうか。

保存治療

まずは安静が必要です。(できないランナーが多そうですが)しかし痛みを我慢して運動を続けると確実に悪化します。オフシーズンであれば思い切って2~6週くらい休足しましょう。その間はエアロバイクなど痛みがでない運動で心肺機能を維持するのがおすすめです。また腓骨筋が凝り固まっている場合はマッサージで緩めます。

症状が強い場合には装具やギプスによる固定が必要な場合もあります。

また原因がはっきりしている場合は原因を取り除きます。例えば不整地でのランニング、傾斜部でのランニング、シューズの不適合(幅の狭い窮屈なシューズ)など。シューズの外側の減りが早い場合にはインソールなどで調整します。

一概には言えませんが土踏まずが内側に倒れ込むプロネーションではなく、その逆のサピネーションの人に多く発症する傾向にあるので、外側を高くしたインソールなどが作られます。
20170426-3.jpg 

20170426-5.jpg

手術

長期間の放置例や狭窄性腱鞘炎、縦断裂をきたして遷延化すると手術適応となる事が多くなります。手術では狭窄性腱鞘炎であれば下腓骨筋支帯を切開したり肥大した腱の部分を切除、縦断裂では変性した腱の部分を切除し断裂部を縫合し管状に形を整えたりします。

一般に、適切に手術療法が行われれば、術後の成績は非常に良好とされています。スポーツマンで手術的に治療した患者(49例)のうち、87%がスポーツ活動に復帰。復帰までの平均は3.49ヶ月。

20170426-4.jpg

腓骨筋腱脱臼・亜脱臼の場合は新鮮例(急性)でさえ4~6週間のギプス固定での治癒率は50%で、確実なスポーツ復帰を目指す場合や陳旧例(慢性)では手術が必要になる事が多いようです。

お役に立ちましたら拍手ボタンのクリックをお願いします。

西院かんな整骨院
京都市|中京区|右京区|下京区|
マラソン・ランニング・ジョギング障害!

参考文献

杉田直樹,立花陽明,坂口勝信.足部・足関節の捻挫で生ずる腱傷害.関節外科 2014;33:38-43
窪田誠.腓骨筋腱損傷・障害の診断と治療.関節外科 2017;36:66-71
鈴木朱美,石垣大介,高木理彰.腓骨筋腱脱臼の診断と治療.関節外科 2017;36:72-81
00:00 ランニング障害・勉強 | (0) | (0) | 


膝の関節炎・滑膜炎【マラソン・ランニング障害】 

走っていると膝が痛くなる。ランナーなら誰もが一度は経験する事だと思います。通常ならしばらく休めば痛みは消失しますが、数週間~数ヶ月経っても痛みが引かない場合、それは膝に慢性の関節炎・滑膜炎を発症しているかもしれません。今回はあくまでもランニング障害としての外傷性の関節炎・滑膜炎を主に扱います

※関節炎・滑膜炎を発症する疾患は関節リウマチ・偽痛風・細菌感染・変形性膝関節症など他にも鑑別するべき疾患が複数あります。


関節の構造と滑膜


膝関節は関節包(かんせつほう)と呼ばれる袋に包まれています。その関節包の内側の壁面が滑膜(かつまく)と呼ばれる組織です。関節包より内がわを関節包内、外がわを関節包外と呼び、一般的に関節炎・滑膜炎は関節包内での炎症を指します。ランナーに多い腸脛靭帯炎や鵞足炎は関節包外の障害になります。

imjustrunning20161116.png 

レントゲンでは異常なし、でも痛い

長引く膝の痛みがあってもレントゲン(X-ray)では異常なしと言われてしまう事が多々あります。特に初期の変形性膝関節症ではレントゲンでは大きな異常所見が見られません。医学的にはレントゲンでの画像所見と痛みにはそれ程強い相関関係がない事が常識となっています。

どういう事かと言うと、レントゲンではあまり変形は見られないのに痛みが強い方もいれば、レントゲンでは強い変形があるにもかかわらず全く痛みを感じない方もおられます。(MRIでは比較的画像所見と痛みに相関関係があります)

そもそも40歳以上の5人に1人が程度の差こそあれ変形性膝関節症と言われていますが、その全員に膝の痛みがあるかと言われるとそうではありません。下の画像では変形の程度はAさんの方が強いのですが、痛みはBさんの方が強かったりします。

imjustrunning20161116_4.png

それよりも痛みが”ある“と”ない“滑膜の炎症の程度と強い相関関係があります。関節の軟骨には痛みを感じる神経(受容器)がないのですり減ろうが裂けようが痛みを感じません。しかし滑膜は関節内で最も血管が豊富で痛みを感じる神経が沢山分布しているために炎症を起こすと強い痛みを感じます。

imjustrunning20161116_3.png 

滑膜の役割

正常な膝の関節包内には関節液がわずかに1~3ccしかありません。この関節液を作り出しているのが滑膜です。滑膜は関節液を作り出すだけではなく、関節液中のいらなくなった不要なごみを回収する役割もあります。その関節液の働きは主に2つです。
imjustrunning20161116_2.png

①関節液にはヒアルロン酸やたんぱく質が含まれ粘り気があります。その関節液が軟骨表面を覆い潤滑油となりスムースな関節運動を助けます。

②さらに関節の軟骨には血管がありません。栄養がなければ軟骨は壊死してしまいますが、軟骨はこの関節液から栄養を受け取っています。

滑膜炎はなぜ起こる

原因の一つとして軟骨の変性(劣化)があります。膝に繰り返し衝撃が加わるなどで小さな軟骨の破片が関節液中にぷかぷか浮遊します。その軟骨の破片は滑膜に取り込まれるのですがそれが滑膜の炎症を誘発します。滑膜炎を発症すると滑膜は通常よりも多くの関節液を作り出すようになります。これがいわゆる“膝に水が溜まる”状態です。

花粉症に例えると花粉(軟骨の破片)が鼻の粘膜(滑膜)に付着すると炎症を起こして鼻水(関節液)が止めどなく流れます。鼻を何度かんでも流れ続けますが、鼻粘膜(滑膜)の炎症が収まれば同時に鼻水(関節液)も正常な量に戻ります。

さらに炎症を起こした滑膜からは追い打ちをかけるように炎症を誘発する種々の化学物質が放出され、軟骨の変性(劣化)を進行させます。こうなってしまうとまさに悪循環です。

ランナーの場合、脚筋力の不足が原因になる事もあります。着地動作の際には膝関節には体重の数十倍もの衝撃が加わります。ただ通常は膝周囲の筋肉によってその衝撃を和らげます。しかし例えばフルマラソンの30km以降。足に力が入らない状態、疲労した状態では筋肉による衝撃吸収機能が上手く働かず関節への強い衝撃が加わり炎症を起こします。

関節炎・滑膜炎のエコー画像

下の図は正常な膝関節のエコー画像です。矢印部分が関節包(滑膜)です。
synovitis20161117_1.jpg

下の図は変形性膝関節症と滑膜の肥厚です。関節包が大きく上に盛り上がっています。
synovitis20161117_2.jpg

エコーではドプラー機能とよばれるものがあり、滑膜が炎症を起こしているかを確認できます。画面のの枠の中での点滅が複数みられるのは炎症を起こしているサインです。正常な関節ではわずかに正常な血管が描出される程度ですが、滑膜炎を起こした関節では滑膜に増殖した異常な血管が描出されています。
synovitis20161118.jpg

下の動画は同一人物の健側(良い方)と患側(悪い方)のドプラー動画です。変形の程度は左右それ程違いはありませんが、炎症は痛みのある患側の膝に強く見られます。



下図はある市民ランナーの膝のエコー画像です。フルマラソンの後半に膝の内側が痛くなり我慢して完走するも激痛に。膝の内側を押すと痛みが強く、関節炎か鵞足炎か判断が難しいところですが、エコーを確認するとどちらかと言えば関節の炎症が強く確認できます。




関節炎・滑膜炎の治療


まずは炎症を抑える為に安静が必要です。ランナーであればランニングを中止します。痛みを我慢しながらの運動は症状を悪化させます。消炎鎮痛作用のある湿布を貼るのも痛みが強い時期には有効です。炎症が軽度であればそれで治癒します。サポーターなどで圧迫し膝の動きを制限してあげる事も効果的です。

中等度以上で痛みが長引く場合には場合によっては病院や整形外科等でヒアルロン酸の注射を行ないます。ヒアルロン酸には関節の動きを滑らかにすると同時に炎症を抑える効果があります。

ある程度痛みのピークを過ぎれば、膝周囲の筋肉に痛みが出ない範囲でトレーニングを行います。特に太もも前面の大腿四頭筋の強化が重要です。スクワットや大腿四頭筋セッティング(検索して下さい)が有効です。

無理に動かす事は炎症を助長する為に控えましょう。ランナーあるある、『走って治す』は筋肉や腱の痛みの場合は有効な事も多々ありますが、関節炎、滑膜炎の場合はあまり効果がありません。

※関節包内の怪我には変形性膝関節症・膝蓋大腿関節症・タナ障害・離断性骨軟骨炎・突発性骨壊死・ジョギング愛好家にみられる脛骨内側顆疲労骨折など鑑別すべき疾患が複数あるので素人判断は禁物です。痛みが長引く場合には必ず専門家に診てもらいましょう。

お役に立ちましたら拍手ボタンのクリックをお願いします。

西院かんな整骨院
京都市|中京区|右京区|下京区|
マラソン・ランニング・ジョギング障害!

00:00 ランニング障害・勉強 | (0) | (0) | 


膝蓋大腿関節症【マラソン・ランニング障害】 

ランニングをしていて膝のお皿の骨・膝蓋骨(しつがいこつ)の裏側や上側に違和感や痛みを感じた場合は膝蓋大腿関節症(しつがいだいたいかんせつしょう)が疑われます。

膝蓋大腿関節症の主な症状

・ランニング時、ランニング後の膝蓋骨の裏側の違和感や痛み
・階段昇降時の膝蓋骨周囲の違和感や痛み
・正座や椅子からの立ち上がり動作時の違和感や痛み
・自転車・ロードバイクでのペダリング動作での違和感や痛み
・膝蓋骨の引っ掛かり感
・膝蓋骨の外側への脱臼感や不安定感
・膝蓋骨周囲の腫れやこわばり
・膝の曲げ伸ばしで膝にゴリゴリ音がする

膝蓋大腿関節とは
膝蓋骨と大腿骨が接触している部分の関節です。膝蓋骨と大腿骨が接触している部分にはそれぞれ軟骨があり摩擦を軽減しています。膝を曲げ伸ばしなどする際には膝蓋骨は軟骨のおかげで上下や左右に滑らかに動きます。

pfjoint20161001-1.jpg pfjoint20161001-2.jpg 

大腿骨には内側顆(ないそくか)と外側顆(がいそくか)と呼ばれる凸面がありその間は凹んでいます(顆間溝)。逆に膝蓋骨の関節面はV字型になっており、膝を曲げる際には膝蓋骨の凸が大腿骨の 凹にうまくはまり込む形で上下に移動します。下左図は膝を曲げた状態です。
pfjoint20161001-5.jpg pfjoint20161001-6.jpg

なぜ違和感や痛みなどの症状が出現するのか
さまざまな要因により膝の屈伸動作で膝蓋骨が大腿骨の凹部分に上手く嚙み合わず、圧迫・摩擦・衝突し炎症や軟骨の損傷を起こします。膝を曲げていくと膝蓋骨と大腿骨の接触面積は徐々に広がり、膝を90°曲げたあたりで最大となります。膝を伸ばした状態では膝蓋骨と大腿骨はほぼ接触していません。

pfjoint20161001-3.jpg 
膝蓋骨は膝を曲げると下に移動します。逆に膝を伸ばすと上に移動します。上下におよそ5~7cm移動します。大腿骨の凹み(顆間溝)のレールの上を移動するイメージですが、時に膝蓋骨が骨の凹みのレールから外れて脱線すると症状を誘発します。医学的には膝蓋骨のマルトラッキングと呼ばれる現象です。

膝蓋骨は一般的に外側に脱臼するので膝蓋大腿関節症もやや外側に症状が発症しやすい傾向にあります。ランニングの着地の際に膝が内側に入るKnee-in Toe-outは症状を誘発するフォームになります。

女性と男性では骨格が異なり一般的にQ-angle(キューアングル)の大きい女性の方が膝が内側に入りやすく発症しやすい傾向にあります。
pfjoint20161001-16.jpg

膝蓋大腿関節症の画像所見

【レントゲン】
膝を曲げた状態で膝蓋大腿関節のレントゲンを撮影すると下図のように見えます。膝蓋骨は大腿骨の凹に綺麗にはまり込み間にはスペースがしっかりあります。
pfjoint20161001-7.jpg 

膝蓋大腿関節症のある方の場合には下図のように膝蓋骨が外側に亜脱臼している場合もあります。
pfjoint20161001-8.jpg

上図の様になってしまう原因は様々で、X脚・内側膝蓋大腿靭帯の断裂・大腿骨の顆間溝の凹みが浅い・膝蓋腱が付着する脛骨粗面の外側偏位・膝蓋骨高位症など複雑です。

【超音波・エコー】
超音波で観察する際、膝を伸ばした状態だと膝蓋骨が邪魔で音波が伝わらないため、膝を曲げることで大腿骨側の関節面である部分の観察が可能です。全体像はエコーでは観察できません。

pfjoint20161001-9.jpg 

正常像(長軸像)
膝蓋大腿関節症・膝蓋大腿関節障害 

膝蓋大腿関節症
膝蓋骨軟化症 

同一人物の健側と患側
anterior knee pain syndrome 

膝蓋大腿関節症
膝蓋大腿関節症20170624a 

正常像膝蓋大腿関節症



膝蓋大腿関節症20170624b 


自分でできる対処方法

まずは痛みのある動作をなるべく避ける事が必要ですが、それ以外に一般の方が簡単にできるものは2つ。

太ももの前面にある大腿四頭筋の筋力トレーニングストレッチです。これで全てが解決するわけではありませんが、まずは3か月やってみる事です。それで痛みが取れなければ他の方法を考えます。

膝蓋骨は大腿四頭筋(内側広筋・外側広筋・中間広筋・大腿直筋)の力を伝える為の種子骨ですが、この筋肉が硬いと膝を曲げた際に膝蓋骨が押し付けられ大腿骨との接触圧が上昇します。

また大腿四頭筋のうち、内側広筋は膝蓋骨が外側へ移動するのを防ぐ働きがあります。

pfjoint20161001-13.jpg 

パテラセッティング(筋力トレーニング)
膝の下にバスタオルなどを挟みます。そしてそのバスタオルを膝裏で押しつぶす様に太ももの前に力を入れます。足首を甲側に曲げると力が入りやすくなります。重要なのは太もも前面の内側にある内側広筋を意識して行う事です。何も考えずに行うのと特定の筋肉を意識して行うのではトレーニング効果が異なります。※パテラ(patella)=膝蓋骨

押し付けた状態を5秒~10秒継続して力を緩めるを20回(目安)

pfjoint20161001-14.jpg 

大腿四頭筋の硬さのチェックとストレッチ
チェックする反対側の膝を90°に曲げる。チェックする側の膝を体の真下よりやや後方に着く。上体を垂直に保ったままで、手を使ってかかとをお尻に近づけてみてください。簡単にかかとがお尻につかなければ太ももの前の筋肉が硬い証拠です。しっかりとストレッチしましょう。下の図がそのままストレッチにもなります。


pfjoint20161001-15.jpg 
自分の場合、全くストレス無くかかとがお尻につきます。

お役に立ちましたら拍手ボタンのクリックをお願いします。

西院かんな整骨院
京都市|中京区|右京区|下京区|
マラソン・ランニング・ジョギング障害!
01:00 ランニング障害・勉強 | (0) | (0) | 


ふくらはぎの肉離れ(超音波エコー画像)・マラソン・ランニング障害2/2 

ふくらはぎの肉離れは超音波エコーで検査するとどのように見えるのでしょうか。外からはわからないふくらはぎの内側を覗いてみましょう。

ふくらはぎの肉離れ(説明)・マラソン・ランニング障害1/2

ふくらはぎ(腓腹筋・ヒラメ筋)の解剖学

ふくらはぎの筋肉は皮膚のすぐ下に腓腹筋(ひふくきん)があり、その更に下にヒラメ筋があります。腓腹筋は内側頭と外側頭(ないそくとう・がいそくとう)の2つに分かれていて、一般的に肉離れは腓腹筋の内側頭に好発します。
201605calfstrain001.jpg 

腓腹筋やヒラメ筋はそれぞれが筋膜(きんまく)と呼ばれる膜に包まれていて隔てられています。
201605calfstrain002.jpg 

エコー検査の手順

エコーのプローブと呼ばれるものを下図のように当てます。
201605calfstrainprobe.jpg  

すると下図のようなエコー画像がみられます。腓腹筋が上にあり、その下にヒラメ筋があります。2つの筋肉はそれぞれの筋膜で隔てられています。画面の左側は膝側で画面の右側が足先側です。画面の上が皮膚表面になります。
西院かんな整骨院・肉離れ・治療  

正常な腓腹筋では綺麗なスジ(医学的にはフィブリラーパターンと呼ばれます)が規則正しく筋膜に向かって走行しているのが確認できます。

肉離れのエコー画像

肉離れではフィブリラーパターン(スジ)が消失し、筋肉(筋周膜)が筋膜から剥離(はくり)してそこに血腫(けっしゅ)が溜まります。また全体的に筋肉が腫れて、高エコー像(画面全体が白っぽくなる)に描出されます。

多くの肉離れは筋肉の線維が途中で断裂するのではなく、筋肉が筋膜に付着する部分で剥がれるような形で損傷します。

例えば頭の髪の毛が筋線維で頭皮が筋膜とすると髪の毛を引っ張ると毛の途中でちぎれるのではなく頭皮から毛が剥がれますよね。エコー画像では腓腹筋の筋膜付着部や腓腹筋がアキレス腱に移行する筋腱移行部に異常像が見られる事がほとんどです。

①正常な腓腹筋
腓腹筋肉離れ・京都市病院整形外科  

②肉離れを起こした腓腹筋
ふくらはぎ肉離れ・京都市病院整形外科   

正常な腓腹筋
ふくらはぎ肉離れ・中京区右京区上京区下京区整骨院接骨院  

④肉離れを起こした腓腹筋
ふくらはぎ肉離れ・西院大宮西京極・整骨院接骨院    

⑤肉離れを起こした腓腹筋
ふくらはぎ痛・京都・マラソン・ランニング 

⑥肉離れを起こした腓腹筋
ふくらはぎ、肉離れ、京都市、エコー検査 

⑦3名の痛みのある方(患側)と痛みのない方(健側)
ふくらはぎの肉離れ・中京区・右京区・上京区・下京区・南区・伏見区 
ふくらはぎ・にくばなれ・西院・大宮・西京極 
腓腹筋・ヒラメ筋・痛み・病院・整形外科・治療院 

⑧腓腹筋とヒラメ筋の筋膜間に広がった血腫
にくばなれ、腓腹筋、ヒラメ筋、画像、検査、治療 
血腫の量が多い原因としては、痛みを我慢して無理に荷重をかけたり歩いたりする事があげられます。腓腹筋とヒラメ筋を隔てる筋膜は下の方はきつく、上の方はゆるく結合しているため、血腫は重力に逆らって上側(膝側)に押し流されていきます。

MRI画像で腓腹筋の肉離れを撮影しても筋膜の部分に高輝度変化が確認できます。下図の場合も腓腹筋とヒラメ筋を隔てる筋膜部分での損傷です。
20160519calfstrain005.jpg 
 

エコー検査で血腫が確認できても、それが皮膚の表面に出現するまでには3~5日程度かかります。初期の圧迫と免荷(体重をかけないようにする)が不十分な場合には腓腹筋・ヒラメ筋筋膜間に血腫がどんどん広がり、吸収・消失するまでに3~4ヵ月を要してしまいます。

またふくらはぎの肉離れのエコー検査では受傷当日や翌日ではいまいちはっきりと描出されない事が多々あります。3~5日経過するとより鮮明に描出される事もあるので、初診時に異状なしと言われても痛みが続く場合は再診しましょう。個人的にも初回よりも2回目の検査の方がよりはっきりとわかります。

肉離れの動画(炎症反応)

下図は正常な腓腹筋と肉離れを起こした腓腹筋の動画です。肉離れを起こした腓腹筋では断裂部に一致して炎症反応(赤い点)が確認できます。ヒラメ筋の繊維も少し不整に描出されています。




ほとんどの腓腹筋の肉離れは急激なダッシュ動作やスピード練習で発症します。力強いキック動作では主に腓腹筋の内側頭が使われるのが原因だと言われています。
201605calfstrain008.jpg 
前を走るアルマズ・アヤナ(Almaz Ayana)と追うゲンゼベ・ディババ(Genzebe Dibaba)。

ふくらはぎの肉離れ(説明)・マラソン・ランニング障害1/2

自身のふくらはぎ痛の経験

お役に立ちましたら拍手ボタンのクリックをお願いします。

西院かんな整骨院
京都市|中京区|右京区|下京区|
マラソン・ランニング・ジョギング障害!

00:00 ランニング障害・勉強 | (0) | (0) | 


TOP | NEXT