膝関節水腫・膝に水が溜まる【マラソン・ランニング障害】
2014年11月01日 (土)
ランニングをしていると、時に膝の痛みに加えて、膝に水が溜まる事があります。特に中高年ランナーに多く、さらに通常のマラソンよりもウルトラマラソンやトレイルランニングでよく見られる傾向があります。
膝に水が溜まることを医学的には『関節水腫』(かんせつすいしゅ)と言います。
水とは関節液と呼ばれるもので、正常な関節でも2~4ml程度は見られます。
関節液の2つの主な役割
・潤滑油として関節のスムーズな動きを助ける
・関節軟骨を栄養する
(軟骨は血管がほとんど無いので関節液から栄養を受け取る)
関節液が作られる場所
膝の関節は関節包という袋に包まれています。関節包は内側の滑膜(かつまく)と外側の線維膜(せんいまく)の2層構造ですが、関節液は内側の滑膜で作られます。膝関節の場合、関節包は前後左右が繋がっています。なので膝を曲げたり伸ばしたりすることで常に関節液は移動します。それにより関節水腫では膝蓋骨の上あたりに疼痛や腫れがある場合や、膝窩部に疼痛や腫れがある場合など様々です。よく痛みが移動すると訴える方もおられます。
関節液が過剰に作られる
通常は関節腔の関節液は常に循環していて一定量が保たれています。しかし排出される量よりも作られる量が多くなると関節水腫が貯留します。作られる量が多くなるのは滑膜に炎症が起きている『滑膜炎』の状態です。
例えば膝関節が痛い時、その痛みはどこからきているのか?軟骨がすり減ったから?半月板が断裂したから?いえいえ。軟骨も半月板もほとんど神経が通っていないので損傷しても痛みは出ません。痛みを引き起こしているのはほとんどの場合、滑膜です。なぜなら滑膜は他の組織に比べて痛みを感じる神経が非常に多く分布しています。
じゃあなぜ滑膜炎が起こるのか?よく軟骨は一度損傷すると治らないといわれますが、実は小さな損傷は日常茶飯事に起きています。そして小さな損傷程度であれば関節液の働きで修復されます。しかし過度の負荷がかかり続けると修復しきれない程の軟骨や半月板などの小さな欠片(数ミクロン)が関節腔に浮遊し始めます。
その小さな欠片が滑膜に付着したりすると白血球やマクロファージなどに異物として認識され攻撃されます。すると滑膜炎が起こり関節液が過剰に作られたり、滑膜自体が肥厚して痛みを感じるようになります。
下の写真は関節内に内視鏡を入れた画像です。ただし膝関節ではなく肩関節です。
左は通常の関節包、右は滑膜炎を起こした関節包です。
関節水腫を引き起こす疾患
・変形性膝関節症・半月板損傷・骨折・骨挫傷・靭帯損傷・関節リウマチ・痛風・偽痛風・細菌感染など様々な原因疾患が考えられます。各疾患によって関節液の性状が異なるのでそこで判断されます。また細菌感染などでは発赤や熱感がみられます。
関節水腫を超音波で確認
エコーでは膝蓋上嚢(しつがいじょうのう)に溜まった関節液を描出します。
関節腔と膝蓋上嚢はつながっています。
通常であれば膝蓋上嚢はわずかに確認できる程度でほとんど隙間はありません。
太枠□の部分をエコーで描出しています。
正常像
異常像
異常像
異常像
膝関節水腫のエコー動画
最初に正常像、次に2例の異常像です。
関節水腫を自分判断する場合
・正座をするなど、屈曲の最終域で痛みが強い
・その際の痛みが限局せず、膝蓋骨周りがなんとなく痛い or 膝窩部が痛い
関節水腫による痛みはピンポイントではなく、膝蓋骨周りがなんとなく全体的に痛い、もしくは膝窩部が痛い場合がほとんどです。痛みの質も鋭い痛みではなく鈍痛です。膝を曲げていくと、関節液が一か所に集中し関節内圧が上昇するため疼痛が誘発されます。
腫脹は主に膝蓋骨の上あたり○に見られます。足を伸ばして座ると重力の影響で水が左右に逃げるため、膝の内側や外側に腫れや痛みがある場合もあります。経験上では膝の外側に多く、『膝の外側の突っ張り感』を訴えます。視診で左右差を確認すればすぐにわかります。
治療
水腫の量が多い場合は穿刺(せんし)と言って注射器で水を抜きます。よく水を抜くと癖になると言われたりしますが間違いです。溜まる人は穿刺しても、しなくても結局は2~3日でまた元に戻ります。その後ヒアルロン酸の注射をすることもあります。
ただ穿刺をする程でもない人はサポーターで膝周りを圧迫すると効果的です。圧迫する事で膝へかかるストレスを減らすということ以上に、圧迫することで関節液が溜まるスペースを無くします。
膝に水が溜まっていてもそれ程痛みがなければ放っておいても良いと思いがちですが、炎症を起こして増加した関節液には膝の軟骨を変性(劣化)させる成分が含まれるため、あまり良い事ではありません。
当然練習を休む勇気も必要です。走らない人はわからないでしょうが、これが案外難しい。
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西院かんな整骨院
京都市|中京区|右京区|下京区|
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膝に水が溜まることを医学的には『関節水腫』(かんせつすいしゅ)と言います。
水とは関節液と呼ばれるもので、正常な関節でも2~4ml程度は見られます。
関節液の2つの主な役割
・潤滑油として関節のスムーズな動きを助ける
・関節軟骨を栄養する
(軟骨は血管がほとんど無いので関節液から栄養を受け取る)
関節液が作られる場所
膝の関節は関節包という袋に包まれています。関節包は内側の滑膜(かつまく)と外側の線維膜(せんいまく)の2層構造ですが、関節液は内側の滑膜で作られます。膝関節の場合、関節包は前後左右が繋がっています。なので膝を曲げたり伸ばしたりすることで常に関節液は移動します。それにより関節水腫では膝蓋骨の上あたりに疼痛や腫れがある場合や、膝窩部に疼痛や腫れがある場合など様々です。よく痛みが移動すると訴える方もおられます。

関節液が過剰に作られる
通常は関節腔の関節液は常に循環していて一定量が保たれています。しかし排出される量よりも作られる量が多くなると関節水腫が貯留します。作られる量が多くなるのは滑膜に炎症が起きている『滑膜炎』の状態です。
例えば膝関節が痛い時、その痛みはどこからきているのか?軟骨がすり減ったから?半月板が断裂したから?いえいえ。軟骨も半月板もほとんど神経が通っていないので損傷しても痛みは出ません。痛みを引き起こしているのはほとんどの場合、滑膜です。なぜなら滑膜は他の組織に比べて痛みを感じる神経が非常に多く分布しています。
じゃあなぜ滑膜炎が起こるのか?よく軟骨は一度損傷すると治らないといわれますが、実は小さな損傷は日常茶飯事に起きています。そして小さな損傷程度であれば関節液の働きで修復されます。しかし過度の負荷がかかり続けると修復しきれない程の軟骨や半月板などの小さな欠片(数ミクロン)が関節腔に浮遊し始めます。
その小さな欠片が滑膜に付着したりすると白血球やマクロファージなどに異物として認識され攻撃されます。すると滑膜炎が起こり関節液が過剰に作られたり、滑膜自体が肥厚して痛みを感じるようになります。
下の写真は関節内に内視鏡を入れた画像です。ただし膝関節ではなく肩関節です。
左は通常の関節包、右は滑膜炎を起こした関節包です。

関節水腫を引き起こす疾患
・変形性膝関節症・半月板損傷・骨折・骨挫傷・靭帯損傷・関節リウマチ・痛風・偽痛風・細菌感染など様々な原因疾患が考えられます。各疾患によって関節液の性状が異なるのでそこで判断されます。また細菌感染などでは発赤や熱感がみられます。
関節水腫を超音波で確認
エコーでは膝蓋上嚢(しつがいじょうのう)に溜まった関節液を描出します。
関節腔と膝蓋上嚢はつながっています。


通常であれば膝蓋上嚢はわずかに確認できる程度でほとんど隙間はありません。
太枠□の部分をエコーで描出しています。

正常像

異常像

異常像

異常像

膝関節水腫のエコー動画
最初に正常像、次に2例の異常像です。
関節水腫を自分判断する場合
・正座をするなど、屈曲の最終域で痛みが強い
・その際の痛みが限局せず、膝蓋骨周りがなんとなく痛い or 膝窩部が痛い
関節水腫による痛みはピンポイントではなく、膝蓋骨周りがなんとなく全体的に痛い、もしくは膝窩部が痛い場合がほとんどです。痛みの質も鋭い痛みではなく鈍痛です。膝を曲げていくと、関節液が一か所に集中し関節内圧が上昇するため疼痛が誘発されます。
腫脹は主に膝蓋骨の上あたり○に見られます。足を伸ばして座ると重力の影響で水が左右に逃げるため、膝の内側や外側に腫れや痛みがある場合もあります。経験上では膝の外側に多く、『膝の外側の突っ張り感』を訴えます。視診で左右差を確認すればすぐにわかります。

治療
水腫の量が多い場合は穿刺(せんし)と言って注射器で水を抜きます。よく水を抜くと癖になると言われたりしますが間違いです。溜まる人は穿刺しても、しなくても結局は2~3日でまた元に戻ります。その後ヒアルロン酸の注射をすることもあります。
ただ穿刺をする程でもない人はサポーターで膝周りを圧迫すると効果的です。圧迫する事で膝へかかるストレスを減らすということ以上に、圧迫することで関節液が溜まるスペースを無くします。
膝に水が溜まっていてもそれ程痛みがなければ放っておいても良いと思いがちですが、炎症を起こして増加した関節液には膝の軟骨を変性(劣化)させる成分が含まれるため、あまり良い事ではありません。
当然練習を休む勇気も必要です。走らない人はわからないでしょうが、これが案外難しい。
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