ふくらはぎの肉離れ(説明)・マラソン・ランニング障害1/2
2015年04月02日 (木)
マラソン・ランニング・ジョギング・陸上競技での“ふくらはぎ”(腓腹筋・ヒラメ筋)の肉離れの説明を全2回に分けて説明しています。
ふくらはぎの肉離れ(超音波エコー画像)・マラソン・ランニング障害2/2
ふくらはぎ(腓腹筋・ヒラメ筋)の解剖
まずは解剖です。ふくらはぎは浅層の腓腹筋(ひふくきん)とその下にある深層のヒラメ筋から構成されています。腓腹筋とヒラメ筋を総称して下腿三頭筋(かたいさんとうきん)とも呼びます。腓腹筋はさらに内側頭(ないそくとう)と外側頭(がいそくとう)の2つに分かれます。そして腓腹筋とヒラメ筋が合体してアキレス腱になります。
一般的に肉離れの多くは腓腹筋の内側に起こります。ランニング・ジャンプ・キック動作での原動力は腓腹筋の内側だからです。特に上図の腓腹筋がアキレス腱に移行する筋腱移行部○(赤丸)が好発部位です。当然それ以外の腓腹筋の外側やヒラメ筋、また筋膜の損傷も起こりえます。腓腹筋の内側の肉離れは別名テニスレッグと呼ばれ、その名の通りテニスプレイ中に好発します。
ふくらはぎの筋肉を輪切りにすると下図のようにいくつかの区画(コンパートメント)に分かれています。筋肉と筋肉を分けているのは筋膜です。肉離れではこの筋膜の損傷も併発します。
筋肉は筋上膜に包まれています。その中に筋周膜に包まれた筋線維束があります。そのさらに中に筋内膜に包まれた筋線維があります。筋線維も筋原線維(0.001mm)の集まりです。肉離れでは細い筋線維の断裂や筋線維束の断裂。また重症例では筋肉自体が断裂します。その他、筋膜が破れる筋膜損傷も頻繁に起こります。
筋膜=筋上膜・筋周膜・筋内膜
肉離れの疫学
関東労災病院スポーツ整形外科受診の肉離れ患者1,239例を対象にした調査。
短距離では太ももの裏のハムストリングスの肉離れが多く、長距離ではふくらはぎの下腿三頭筋の肉離れが多い。
年齢別では30歳以上で下腿三頭筋の損傷が増加するが、中学生や高校生では下腿三頭筋の損傷が著しく少ない。
肉離れの重症度分類・症状
肉離れは急なダッシュやジャンプなど1回の外力で損傷するタイプとマラソンやランニングなどで同じ場所に繰り返し負荷がかかり徐々に切れていくタイプがあります。前者の場合は明らかに受傷起点がわかりますが、後者の場合はじわじわふくらはぎが痛くなってくるので本人が肉離れだと気が付いていないこともよくあります。
重症度は一般的にⅠ度・Ⅱ度・Ⅲ度損傷などに分類されますが、そもそも解釈が文献によってバラバラなのであまり個人的に好きではありません。それにMRIなどを利用して慎重に検査しない限り正確な分類は不可能です。
超音波エコー検査では比較的簡便に断裂部や血腫の有無や大きさを確認できます。
下記にふくらはぎの肉離れの主な症状を並べています。
自分に当てはまる項目の数が多いほど要注意です。
①歩行時痛がある
②走行時痛がある
③ストレッチをすると痛みを感じる
④健側と比較して圧痛が著明に存在する
⑤痙攣しているような突っ張り感を感じる
⑥安静時にもうずくような痛みが長時間続く
⑦夜間や就寝時にも痛みで目が覚める
⑧スムーズに歩けず跛行がみられる
⑨ふくらはぎが浮腫むもしくは腫れる
⑩つま先立ちができない
⑪皮下出血がある
⑫筋肉に凹みがある
肉離れの治癒までの期間
受傷直後のストレッチ痛の有無で治癒期間がある程度予想できます。ストレッチ痛がなければ1~2週間でスポーツ復帰できる可能性もあります。明らかなストレッチ痛があれば復帰には1~3ヵ月を要します。
個人的にはエコー検査で断裂部があまり鮮明ではなく、出血もない場合は1ヶ月以内にランニングに復帰できますが、断裂部が鮮明で出血も確認できる場合にはジョギング開始が2ヶ月、スピード練習まで3~6ヶ月程度要する印象です。
肉離れの場合、受傷直後は歩けないほどの痛みがあっても、1週間もすれば痛みがかなり減少し普通に歩く事ができたりする事がよくあります。
しかし肉離れを起こした部位はまだゆるくつながっているだけで元の強度に戻るまでにはある程度の期間(3ヶ月程度)が必要です。まだ筋肉の強度が不完全な状態でスポーツに復帰すると高い確率で同じ場所を断裂し再発します。
自分でできる治療・セルフケア
治療の大原則は安静です。これなくして肉離れは治癒しません。
○アイシング・ホットパック
従来は受傷から24~72時間はアイシングをするべきだと言われていましたが、最近の考えとして長期間のアイシングは治癒を遅らすとされています。損傷部位の回復には早期から血流増加が必要と考えられ、痛みのピークが過ぎれば組織修復を目的に温熱療法に切り替えます。ジェル状のホットパックは電子レンジに30秒~1分ほど入れると高温になり、それをタオルなどに包んで患部を温めます。
○湿布
市販のロキソニンテープやボルタレンテープなど消炎鎮痛作用のある湿布を貼ります。痛みが強い初期には有効です。『冷シップと温シップ』がありますが、好みの問題なので冷やすと気持ちが良ければ冷湿布、温めると気持ちが良ければ温湿布で十分です。
○圧迫と免荷
肉離れで一番重要なのは圧迫と免荷(めんか)です。痛みが強い場合は松葉づえなどを使ってなるべく体重をかけないようにしましょう。痛みを我慢して無理に歩くと確実に悪化します。
また圧迫サポーターには様々な種類がありますが、自身がふくらはぎを痛めた際には医療用の弾性ストッキングを使用していました。特に中圧以上の比較的強いものを選びました。一般的にふくらはぎと足首の周径を測ってサイズを選びます。
医療用の弾性ストッキングは大腿までや膝下まで、つま先ありやつま先なし、薄手や厚手など種類が豊富です。商品としてはレックスフィットやアンシルク3が有名です。
個人的に使用しているのはレックスフィットの【ハイソックス、中圧(厚手タイプ)、つま先なし、ブラック】です。朝起きてから夜寝るまで常時着用していました。就寝中は脱ぎます。
※セルフケアとしてストレッチを行うランナーは多いと思いますが、受傷直後に行うと筋の断端が離れてしまい悪化の原因となります。また肉離れを起こした側のふくらはぎは時間の経過とともに筋萎縮(筋肉が細くなる)が起こる事があります。普通の人は余程かたよった使い方をしていなければ左右のふくらはぎの周径の差は1cm未満ですが、受傷後1~2ヶ月後に計測すると肉離れした側が-1~1.5cm程細くなっていたりします。その際は痛みのない範囲でカーフレイズなどの筋力トレーニングを行います。
肉離れの予防
自分が一番重要だと思うのは危機察知能力です。当然一回の力でバチンと切れてしまう場合はどうしようもありませんが、長距離をしていると前兆のようにふくらはぎが突っ張る事があります。自分の肉離れの時も強い痛みが現れる3~5日前から走っている時にふくらはぎに軽い痛みと張りを感じていました。それを無視して走った事で重症化したように思います。ですから少しでもふくらはぎに違和感を感じたら練習を止める危機察知能力が非常に重要です。
鑑別疾患
肉離れと思ってもただの筋肉痛であったり、逆にただの筋肉痛と思っても肉離れだったりします。この辺りはなかなか判断が難しいところです。それ以外に慢性コンパートメント症候群・深部静脈血栓症・静脈瘤・蜂窩織炎・ベーカー嚢腫の破裂など鑑別すべき疾患がいくつかあるため安易な素人判断は危険です。
雑学
日本人ランナーとケニア・エチオピアランナーでは大きな身体的特徴の違いが2つあります。一つは大腰筋の大きさなんですが、もう一つはアキレス腱の長さです。
なぜケニア・エチオピアのランナーのふくらはぎがあんなに細いのかというと筋腹が短いからです。筋腹が短いという事は別の言い方をするとアキレス腱が長いという事です。逆に日本人は筋腹が長くアキレス腱が短い。特にヒラメ筋が発達しているので俗に言う大根足が多いのです。別に太っているから大根足ではないんです。

ふくらはぎの肉離れ(超音波エコー画像)・マラソン・ランニング障害2/2
自身のふくらはぎ痛の経験
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ふくらはぎの肉離れ(超音波エコー画像)・マラソン・ランニング障害2/2
ふくらはぎ(腓腹筋・ヒラメ筋)の解剖
まずは解剖です。ふくらはぎは浅層の腓腹筋(ひふくきん)とその下にある深層のヒラメ筋から構成されています。腓腹筋とヒラメ筋を総称して下腿三頭筋(かたいさんとうきん)とも呼びます。腓腹筋はさらに内側頭(ないそくとう)と外側頭(がいそくとう)の2つに分かれます。そして腓腹筋とヒラメ筋が合体してアキレス腱になります。


一般的に肉離れの多くは腓腹筋の内側に起こります。ランニング・ジャンプ・キック動作での原動力は腓腹筋の内側だからです。特に上図の腓腹筋がアキレス腱に移行する筋腱移行部○(赤丸)が好発部位です。当然それ以外の腓腹筋の外側やヒラメ筋、また筋膜の損傷も起こりえます。腓腹筋の内側の肉離れは別名テニスレッグと呼ばれ、その名の通りテニスプレイ中に好発します。
ふくらはぎの筋肉を輪切りにすると下図のようにいくつかの区画(コンパートメント)に分かれています。筋肉と筋肉を分けているのは筋膜です。肉離れではこの筋膜の損傷も併発します。

筋肉は筋上膜に包まれています。その中に筋周膜に包まれた筋線維束があります。そのさらに中に筋内膜に包まれた筋線維があります。筋線維も筋原線維(0.001mm)の集まりです。肉離れでは細い筋線維の断裂や筋線維束の断裂。また重症例では筋肉自体が断裂します。その他、筋膜が破れる筋膜損傷も頻繁に起こります。

筋膜=筋上膜・筋周膜・筋内膜
肉離れの疫学
関東労災病院スポーツ整形外科受診の肉離れ患者1,239例を対象にした調査。
種目 | ハムストリングス | 下腿三頭筋 |
短距離 | 65.1% | 3.2% |
ジョギング | 32.1% | 46.4% |
マラソン | 25.0% | 41.7% |
短距離では太ももの裏のハムストリングスの肉離れが多く、長距離ではふくらはぎの下腿三頭筋の肉離れが多い。
年齢別では30歳以上で下腿三頭筋の損傷が増加するが、中学生や高校生では下腿三頭筋の損傷が著しく少ない。
肉離れの重症度分類・症状
肉離れは急なダッシュやジャンプなど1回の外力で損傷するタイプとマラソンやランニングなどで同じ場所に繰り返し負荷がかかり徐々に切れていくタイプがあります。前者の場合は明らかに受傷起点がわかりますが、後者の場合はじわじわふくらはぎが痛くなってくるので本人が肉離れだと気が付いていないこともよくあります。
重症度は一般的にⅠ度・Ⅱ度・Ⅲ度損傷などに分類されますが、そもそも解釈が文献によってバラバラなのであまり個人的に好きではありません。それにMRIなどを利用して慎重に検査しない限り正確な分類は不可能です。
超音波エコー検査では比較的簡便に断裂部や血腫の有無や大きさを確認できます。
下記にふくらはぎの肉離れの主な症状を並べています。
自分に当てはまる項目の数が多いほど要注意です。
①歩行時痛がある
②走行時痛がある
③ストレッチをすると痛みを感じる
④健側と比較して圧痛が著明に存在する
⑤痙攣しているような突っ張り感を感じる
⑥安静時にもうずくような痛みが長時間続く
⑦夜間や就寝時にも痛みで目が覚める
⑧スムーズに歩けず跛行がみられる
⑨ふくらはぎが浮腫むもしくは腫れる
⑩つま先立ちができない
⑪皮下出血がある
⑫筋肉に凹みがある
肉離れの治癒までの期間
受傷直後のストレッチ痛の有無で治癒期間がある程度予想できます。ストレッチ痛がなければ1~2週間でスポーツ復帰できる可能性もあります。明らかなストレッチ痛があれば復帰には1~3ヵ月を要します。
個人的にはエコー検査で断裂部があまり鮮明ではなく、出血もない場合は1ヶ月以内にランニングに復帰できますが、断裂部が鮮明で出血も確認できる場合にはジョギング開始が2ヶ月、スピード練習まで3~6ヶ月程度要する印象です。
肉離れの場合、受傷直後は歩けないほどの痛みがあっても、1週間もすれば痛みがかなり減少し普通に歩く事ができたりする事がよくあります。
しかし肉離れを起こした部位はまだゆるくつながっているだけで元の強度に戻るまでにはある程度の期間(3ヶ月程度)が必要です。まだ筋肉の強度が不完全な状態でスポーツに復帰すると高い確率で同じ場所を断裂し再発します。
自分でできる治療・セルフケア
治療の大原則は安静です。これなくして肉離れは治癒しません。
○アイシング・ホットパック
従来は受傷から24~72時間はアイシングをするべきだと言われていましたが、最近の考えとして長期間のアイシングは治癒を遅らすとされています。損傷部位の回復には早期から血流増加が必要と考えられ、痛みのピークが過ぎれば組織修復を目的に温熱療法に切り替えます。ジェル状のホットパックは電子レンジに30秒~1分ほど入れると高温になり、それをタオルなどに包んで患部を温めます。

○湿布
市販のロキソニンテープやボルタレンテープなど消炎鎮痛作用のある湿布を貼ります。痛みが強い初期には有効です。『冷シップと温シップ』がありますが、好みの問題なので冷やすと気持ちが良ければ冷湿布、温めると気持ちが良ければ温湿布で十分です。
○圧迫と免荷
肉離れで一番重要なのは圧迫と免荷(めんか)です。痛みが強い場合は松葉づえなどを使ってなるべく体重をかけないようにしましょう。痛みを我慢して無理に歩くと確実に悪化します。
また圧迫サポーターには様々な種類がありますが、自身がふくらはぎを痛めた際には医療用の弾性ストッキングを使用していました。特に中圧以上の比較的強いものを選びました。一般的にふくらはぎと足首の周径を測ってサイズを選びます。
医療用の弾性ストッキングは大腿までや膝下まで、つま先ありやつま先なし、薄手や厚手など種類が豊富です。商品としてはレックスフィットやアンシルク3が有名です。
個人的に使用しているのはレックスフィットの【ハイソックス、中圧(厚手タイプ)、つま先なし、ブラック】です。朝起きてから夜寝るまで常時着用していました。就寝中は脱ぎます。

※セルフケアとしてストレッチを行うランナーは多いと思いますが、受傷直後に行うと筋の断端が離れてしまい悪化の原因となります。また肉離れを起こした側のふくらはぎは時間の経過とともに筋萎縮(筋肉が細くなる)が起こる事があります。普通の人は余程かたよった使い方をしていなければ左右のふくらはぎの周径の差は1cm未満ですが、受傷後1~2ヶ月後に計測すると肉離れした側が-1~1.5cm程細くなっていたりします。その際は痛みのない範囲でカーフレイズなどの筋力トレーニングを行います。
肉離れの予防
自分が一番重要だと思うのは危機察知能力です。当然一回の力でバチンと切れてしまう場合はどうしようもありませんが、長距離をしていると前兆のようにふくらはぎが突っ張る事があります。自分の肉離れの時も強い痛みが現れる3~5日前から走っている時にふくらはぎに軽い痛みと張りを感じていました。それを無視して走った事で重症化したように思います。ですから少しでもふくらはぎに違和感を感じたら練習を止める危機察知能力が非常に重要です。
鑑別疾患
肉離れと思ってもただの筋肉痛であったり、逆にただの筋肉痛と思っても肉離れだったりします。この辺りはなかなか判断が難しいところです。それ以外に慢性コンパートメント症候群・深部静脈血栓症・静脈瘤・蜂窩織炎・ベーカー嚢腫の破裂など鑑別すべき疾患がいくつかあるため安易な素人判断は危険です。
雑学
日本人ランナーとケニア・エチオピアランナーでは大きな身体的特徴の違いが2つあります。一つは大腰筋の大きさなんですが、もう一つはアキレス腱の長さです。
なぜケニア・エチオピアのランナーのふくらはぎがあんなに細いのかというと筋腹が短いからです。筋腹が短いという事は別の言い方をするとアキレス腱が長いという事です。逆に日本人は筋腹が長くアキレス腱が短い。特にヒラメ筋が発達しているので俗に言う大根足が多いのです。別に太っているから大根足ではないんです。




ふくらはぎの肉離れ(超音波エコー画像)・マラソン・ランニング障害2/2
自身のふくらはぎ痛の経験
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