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前距腓靭帯損傷・足首の捻挫【マラソン・ランニング障害】 

米国では毎日2万人以上の人が足首を捻挫(ねんざ)しています。それだけポピュラーな外傷なだけに『捻挫なんて放っておけばそのうち良くなる』なんて考えている方もいるでしょうが、近年のレビューでは、5~33%は受傷1年後も痛みや不安定感が残存し、3~34%は一年以内に再受傷するとされています。

足首の捻挫では多くの場合、外側の靭帯(外くるぶし周囲)を損傷します。そのうち約85%が前距腓靭帯(ぜんきょひじんたい)の単独損傷で、約20~40%が前距腓靭帯踵腓靭帯(しょうひじんたい)の複合損傷であり、踵腓靭帯の単独損傷や後距腓靭帯(こうきょひじんたい)の損傷は非常にまれです。

前距腓靭帯が破綻した後、さらに強いストレスが加わると交通線維によって連続している踵腓靭帯が複合損傷(巻き添えを食らう)します。

足首の靭帯は意外と知らない内に断裂している事があります。断裂していなくても伸び切ってしまえば靭帯として機能しないので同様です。

例えばプロのバスケットボール選手を10人集めれば5人程は左右どちらかの靭帯を断裂していたり、自分も右足の前距腓靭帯を断裂していますが、いつ断裂したのか記憶が定かではありません。断裂していても普通にランニングはできているので問題もありません。
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※MilnerとSoamesの報告では前距腓靭帯は約50%が二分し、約30%が三分していると述べています。

一般的には下図の様に“内返し”する事により捻挫します。トレイルランニングでは石や木の根っこに着地した際、バスケットボールやバレーボールでは他の選手の足の上に着地した際に捻挫する事が良くあります。
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症状

圧痛が外くるぶしの前下方、下図にあります。軽症であれば歩行は可能ですが、重症では歩行時の痛みが強く跛行(はこう)が見られます。受傷の数時間後から外くるぶしの周囲が腫れてきます。皮下出血斑は受傷直後には確認できず2~5日後に踵や前足部に出現することもあります。

同じ捻挫でも程度により、足首が確認できないくらいパンパンに腫れる方や、見た目にはほとんど腫れが分からない方まで色々です。
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応急処置

腫れの程度にもよりますが、受傷後24時間~72時間は1日4~5回の20分冷却(アイシング)を継続します。寝ている際には不可能なので消炎鎮痛作用のある湿布を貼り炎症物質が作られるのを防ぎます。

またテーピングやサポーターなどでしっかりと圧迫固定することで腫れを抑えます。個人的には圧迫固定が一番重要だと考えています。夜間も行いましょう。サポーターはザムストのA1が一般的です。足首の短いものと長いものがありますが、長い方が安定・安心感がありおすすめです。

特に腫脹や痛みが強く、荷重不能な例では10日間程度の短期間のギプス固定による良い成績が報告されています。

ギプスを外した後にサポーターをするにしても、初めからサポーターをするにしても修復靭帯の強度が再獲得されるまでの6週~3ヶ月は装着を継続します。スポーツ復帰後も再受傷予防のためにしばらくはスポーツ活動中も装着します。
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スポーツ復帰までの期間

アメリカの高校生における調査では、新鮮足関節外側靭帯損傷の52%は受傷後7日以内にスポーツに復帰しており、22日以上を要したのは10%でした。しかしこの調査では全体の83%は靭帯の不全断裂です。

初期の歩行時痛や腫脹が強く、皮下出血斑が見られる症例ではスポーツ復帰に2~3か月を要する例も多数あります。

つまり『捻挫は○○日位で治る』とそんなに単純ではなく、結局は程度の問題です。

適切な治療が行われないと足首の不安定性(グラグラする)が残存したり、可動域制限(正座ができなくなる)などが残ったりします。

30秒ほど片足ジャンプを行って痛みがなければ復帰が可能です。着地の際に痛みがあれば無理のない範囲で段階的に復帰します。

最近の医学論文ではギプスでの長期の固定(6週間)では半数以上に愁訴(患者が訴える症状)が残存し、逆に簡単なサポータでの固定と早期から痛みのない範囲での可動域訓練や運動療法を開始する方が愁訴の残存が少ないと報告されています。

裂離骨折の合併

若年者の場合、靭帯の損傷よりも裂離骨折(れつりこっせつ)の割合が高くなります。小児では、前距腓靭帯付着部の骨端軟骨の強度が足関節外側靭帯の強度に比べて弱いためです。靭帯が断裂するより先に骨(軟骨)が裂離します。

前距腓靭帯は腓骨と距骨の2カ所に付着していますが、腓骨側付着部は靭帯が狭い範囲に集中して付着しているため強い力学的ストレスにさらされているため、裂離骨折のほとんどは腓骨側で起こります。

内返し捻挫による年齢別の腓骨裂離骨折の割合10歳以下(77%)11~14歳(19%)15~18歳(13%)となっており年齢が低いほど靭帯の損傷よりも裂離骨折の割合が高くなります。10歳以下はまず裂離骨折を疑います。

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前距腓靭帯のエコー画像

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正常な前距腓靭帯は腓骨(外くるぶし)と距骨の間に斜めに走行している様子が確認できます。
前距腓靭帯・ATFL・足首捻挫・エコー 

前距腓靭帯が損傷すると新鮮例では靭帯が腫れたり、蛇行したり、陳旧例では何も描出されず確認ができません。下図では骨の上の軟部組織もかなり腫れています。
前距腓靭帯・ATFL・足首捻挫・エコー  

それでは自分の前距腓靭帯を描出してみます。まずは左足。無事に残存しています。
足首の捻挫・前距腓靭帯損傷・断裂 

次は右足。実質部で綺麗に断裂しています。靭帯の腓骨付着部と距骨付着部とも骨の表面が滑らかではなくボコボコ不整像が確認できます。ランニングの着地の際、右足だけオーバープロネーションが強いのですが、もしかして前距腓靭帯の機能不全が原因?
足首の捻挫・前距腓靭帯損傷・断裂 

下図は左足と右足を2画面分割で表示しています。
ATFL tear echo 
靭帯は受傷直後は腫れて肥厚しますが、時間が経過すると菲薄化します。

下図は腓骨(外くるぶし)の裂離骨折のエコー画像です。
腓骨裂離骨折・剥離骨折・捻挫・os subfibulare 
※Os subfibulareは
成長期の捻挫により靭帯付着部の軟骨が裂離し、成長後に骨化した副骨。小児の1%に存在。
os(骨)・sub(下)・fibulare(腓骨側)ラテン語


下図は脛骨(内くるぶし)の裂離骨折のエコー画像です。
三角靭帯損傷・内果裂離骨折・ossubtibiale 
※Os subtibiale。os(骨)・sub(下)・tibiale(脛骨側)ラテン語

下図は距骨の裂離骨折のエコー画像です。
距骨裂離骨折・剥離骨折・捻挫 

レントゲンでは映らない靭帯や軟部組織の損傷はエコー検査で確認可能です。
また炎症の有無もドプラ機能で確認可能です。

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参考文献
篠原靖司.足関節外側靭帯の解剖と機能.関節外科 2014;33:10-14
亀山泰.足部・足関節捻挫の救急対処法.関節外科 2014;33:58-63
山口智志.新鮮足関節外側靭帯損傷の診断と治療.関節外科 2014;33:64-69
笹原潤,高尾昌人.残存靭帯をどう診るか.Orthopaedics 2017;30:7-14
吉村一朗.保存療法と手術療法をどう使い分けるか.Orthopaedics 2017;30:29-33
森本将太,安井洋一,宮本亘.小児足関節外果裂離骨折の評価および治療.Orthopaedics 2017;30:49-54
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