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腸脛靭帯炎(ランナー膝)【マラソン・ランニング障害】 

腸脛靭帯炎(ちょうけいじんたいえん)はランナーに多い膝の外側の障害です。走る際の繰り返す膝の屈曲・伸展(曲げ伸ばし)により腸脛靭帯が大腿骨の外側上顆(がいそくじょうか)と呼ばれる骨の出っ張りを前後に乗り越える際の物理的なストレス(圧迫・摩擦・伸張・捻転ストレス)により起こります。 別名:ランナー膝ンナーズニーとも呼ばれます。

治療院を受診した直近100名の市民ランナーの
統計を以前取りましたが、100名中32名が腸脛靭帯炎での受診でした。

腸脛靭帯炎ランナー膝
ランナーズニー
 ※腸脛靭帯はお尻の大殿筋(だいでんきん)と大腿筋膜張筋(だいたいきんまくちょうきん)の2つの筋肉が合体して太ももの外側を下に向かって伸びています。つまりお尻の筋肉が緊張すると腸脛靭帯に強いテンションがかかります。
   

腸脛靭帯は膝を伸ばした状態では外側上顆(骨の出っ張り)より前に、膝を曲げた状態では後ろに移動します。実験では膝関節屈曲30~45°を境に前に移動したり後ろに移動したりを繰り返します。しかし直接骨と擦れる訳ではなく、大腿骨外側上顆と腸脛靭帯との間には他の軟部組織(脂肪組織)があり、その組織を乗り越えるように移動します。
20180219ITB.jpg      
最新の研究では腸脛靭帯と大腿骨外側上顆の間には脂肪体が存在しており、脂肪体には神経終末や血管が多く存在するので、脂肪体の炎症が強い痛みを誘発しているという考えが主流です。実際、超音波エコー検査をすると腸脛靭帯にはほとんど炎症は確認できず、腸脛靭帯と大腿骨外側上顆の間にある軟部組織に強い炎症反応が確認できます。 


【痛みの場所と徒手検査】

圧痛点(押した時の痛み)や運動時の痛みは下の赤丸の部分に見られます。
ITB2015-2.jpg ITB2015-3.jpg  腸脛靭帯炎

徒手検査ではグラスピングテスト(grasping test)が有名です。患者を椅子に座らせ検者が母指で大腿骨外側上顆の上を通る腸脛靭帯を圧迫しながら患者が膝を曲げ伸ばしすると、膝関節屈曲30°付近で痛みを感じます。症状の強い方は『ゴリゴリ』とした感じが指を通してわかります。


【症状】

走っているとまず前兆として大腿部外側や臀部の違和感があり、それが徐々に痛みに変わります。ある一定の距離を走ると痛みが出現し、しかし調子が良いと全く痛みがなく、もしかして治ったのかなと思う時もありますが、やはり走ると痛みがでるを繰り返します。日常生活では階段の下り、走る際にも下り坂で痛みが強くでる方が多いようです。治癒までには早くて1~2週間、長い方だと3~6ヶ月かかります。走ってあれだけ痛かったのに翌日にはぴたりと痛みがなくなりますが治癒したわけではありません。


【原因】

□初心者ランナーの場合は脚筋力が不足している
□無理な距離走を行った(30km走や40km走)
□無理な坂道練習を取り入れた
□LSDなど低速で狭いストライドで長時間走った
□大会前に急に練習量を増加させた
□臀部の筋肉の柔軟性の低下
□下肢アラインメント異常
(O脚・大腿骨外側上顆が大きい・腸脛靭帯が厚いetc.)


※個人的にはフォームが原因のランナーよりも、その人の走力以上の無理な練習(距離走や坂道練習)をして発症している市民ランナーが大多数に思います。例えば月間150~200km位しか走っていないのにとりあえず不安だからと言うことで30km走をやったり40km走をやったりした後に発症します。正直、月間走行距離が200km前後のランナーに30km走は不要だと思っています。


【治療とセルフケア】

個人でできる事は、股関節やお尻の筋肉のストレッチ、フォームの修正、練習メニューの変更くらいでしょうか。また痛みを出さない事がすごく重要です。よく走ってみて痛みがでたら走るのを止めるを繰り返し半年くらい症状を長引かせているランナーがいます。最初は7km位で痛みが出ていたのにそのうち2~3kmで痛みが出だします。人間には自然治癒能力がありますから徐々に組織は回復に向かいます。しかし練習で痛みを出してしまうとまたふりだしに戻ると考えてもらって構わないと思います。

まず腸脛靭帯炎になった場合、長期戦を覚悟します。これを安易にすぐに治ると期待してしまうと精神的に疲れます。かといってすぐに治らない場合がないわけでもありません。軽度の腸脛靭帯炎だと1~2週間で治癒することもあります。そして
走りながら治せる練習メニューもあります。逆に3ヵ月間完全に安静にしていて、いざ久しぶりに走り始めたら痛みが出たなんて話もよく聞きますので安静にしていれば必ず良くなるとも言えません。


【腸脛靭帯炎の超音波エコー画像・動画】

腸脛靭帯はエコー検査をすると下の図のように描出されます。大腿骨外側上顆(骨の出っ張り)の上を走行する腸脛靭帯が確認できます。
ITS20180106.jpg 

エコーにはドプラと呼ばれる機能があります。これは炎症により異常に増殖した血流信号をとらえる機能です。炎症が発生すると血管新生が起こります。これは損傷した部位を治そうと周りから新たに沢山の血管が伸びて集まってきます。

正常に治し終わるとそれらの血管は役目を終えて消失するのですが、まだ治している最中に再びストレスがかかると更に血管新生が起こりどんどん異常な血管が増殖します。血管には神経線維も必ず並走しているので血管が沢山ある=神経線維も沢山あるとなり、その部分は痛みに対してとても過敏な状態になります。


症例1
下の動画は40km走の後に痛みを感じるも数日後には痛みがなくなったので再度20km走を行った後に症状が増悪した市民ランナーです。腸脛靭帯と大腿骨外側上顆の間にある軟部組織に強い血流信号(炎症)が確認できます。この部分には正常な血管も走行しています。正常な血管は比較的大きな赤い丸や線で描出されます。異常な血管は小さな点として描出されるので区別が可能です。腸脛靭帯自体も腫れています。(組織が腫れると周りとの境界がはっきりする)




症例2
下の動画は京都マラソン2018の翌日と翌々日に検査した腸脛靭帯炎の市民ランナー2名です。一人は痛みに耐えて完走、もう一人は15km前後でリタイアされました。腸脛靭帯と大腿骨の間に挟まれた脂肪組織に強い炎症反応が確認できます。




【炎症による血管新生のイメージ】



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西院かんな整骨院
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