足底腱膜炎~踵の痛み~【マラソン・ランニング障害】
2011年04月10日 (日)
【最終更新日】2023年4月
踵(かかと)の痛みと一言で言っても原因には“足底腱膜炎”や“踵骨疲労骨折”や“踵脂肪体炎”など様々です。過去に自分も大阪府チャレンジ登山大会(通称:ダイトレ)後に踵の痛みを発症し、2週間程歩くのもままならない日々を過ごしたことがあります。一番痛みが強い日には踵をまともにつく事ができませんでした。
足底腱膜炎
最もよく見られる”かかと”のランニング障害は足底腱膜炎です。圧痛点は踵骨の内側の足底腱膜起始部○にあります。 足底腱膜は踵骨(しょうこつ)の中央からではなく、少し内側から始まり扇状に広がっています。走行距離やトレーニングの急激な増加により発症します。別のランニング障害として踵骨の疲労骨折があります、その場合には踵骨の内側と外側○に圧痛があります。かかとを両横からつまむように力を入れると痛みが出ます。
足底腱膜炎の病理所見
足底腱膜炎の病変は、繰り返しの負荷により治癒と損傷の機転が混在する結果、変性を伴う有痛性の瘢痕組織が形成されます。異常な血管新生や神経線維の増生によって疼痛過敏な状態になっています。変性とは簡単に言うと組織の強度が弱くなる変化です。
これまでは足底腱膜炎は慢性炎症をきたした病態と考えられてきましたが、近年、その炎症的側面はあまり大きくないとされ、より組織変性の側面が強調されるようになってきています。実際エコー検査をしても炎症反応はほとんど確認できません。欧米では足底腱膜炎ではなく足底腱膜症と呼ばれるようになっています。
足底腱膜炎は発症から10ヵ月以内に80~90%の方が自然治癒するのですが、長期に及ぶ為、フラストレーションが溜まりやすい障害です。また走れないこともない為に、痛みを我慢して練習すると結局完治までに長期間を要します。

朝の第一歩目の痛み
症状の特徴として朝、起床してから第一歩目の痛み(first-step pain)があります。就寝中に癒合した微小断裂部が起床時の歩行開始により引っ張られて再断裂して痛みが現れます。これにより毎朝痛みを繰り返します。そして断裂と癒合を繰り返しながら最終的には断裂部が癒合できなくなり治癒します。
足底腱膜炎の画像所見
日本人の足底腱膜の厚みは平均2.7mmとする報告があります。(海外では3.8mm)そこから考えると足底腱膜が肥厚していると判断する一つの基準は2.8mm以上になります。(海外では4mm以上)また難治性足底腱膜炎の厚みの平均は4.2mmであったとする報告があります。
上図の□部分をエコーで観察すると下図のようになります。滑らかに足底腱膜がかかとの踵骨(しょうこつ)に付着し、足底腱膜の中には綺麗な横線(フィブリラー・パターン)が確認できます。
足底腱膜炎のエコー画像
踵骨の付着部で足底腱膜が大きく腫大し、さらに正常の足底腱膜では見られる横の線が消失し、全体的に黒色(低エコー)になっています。MRIを用いた足底腱膜炎の報告では24~58%の患者にしか足底腱膜の肥厚はみられないとされており、肥厚がないからと言って足底腱膜炎ではないとは限りません。
正常な足底腱膜の厚み
足底腱膜炎の厚み
また足底腱膜の踵骨付着部以外でも足底腱膜の実質部が紡錘状に肥厚し、着地の際に土踏まずの部分に痛みを感じることもあります。大きい場合は体表からもわかるくらい足底腱膜の一部が『ぷくっ』と膨れていて、足の裏にしこりができます。

危険因子
①長時間の立ち仕事
②足関節背屈角度の減少
③BMIの増加 (肥満)
それぞれ3つが足底腱膜炎の独立した危険因子ですが、足関節の背屈角度の減少が最も重要です。ただこれは一般の人に関するもので、ランナーであればそれ以外に走行距離の増加、不整地でのランニング、踵着地、薄底のシューズなどが加わるのではないでしょうか。 ちなみに背屈とは足首を上に曲げる動作です。
また偏平足の方は足底腱膜の付着部で痛みが出やすく、逆にハイアーチの方は足底腱膜の実質部(土踏まずの部分)で痛みが出やすいと言われています。
踵部・脂肪体損傷
足底にはクッション材として厚さ2cm程の脂肪体と呼ばれる組織が存在します。この踵部脂肪体は蜂巣状の構造になっており衝撃吸収作用があります。もしこれがなければ足底には組織が圧迫壊死を起こしてしまうほどの高い局所的負荷がかかっています。
しかし、年を取るにつれてこの脂肪体の萎縮(薄くなる)を起こします。これはほとんど例外はありません。つまり若いランナーは天然の厚いインソールを、年配のランナーは薄いインソールを否応なしに履いている事になります。
拡大すると蜂の巣のような袋の中に脂肪が詰まっています。
ちなみに足底は、体表で最も高度に血管が発達した部位です。 なので繰り返す着地衝撃により足底で血管内の赤血球が破壊されて、中のヘモグロビンが尿から排せつされることで貧血を起こします。
この脂肪体が損傷を起こした場合を踵部脂肪体損傷やファットパッド症候群(Heel Fat Pad Syndrome)と呼びます。
足底腱膜炎の圧痛点○と踵脂肪体炎の圧痛点○は微妙に違います。
踵部脂肪体損傷の詳細はこちらのページに別途まとめています。
足底腱膜炎とランニングシューズ
またシューズの見直しが重要です。ソールの薄いシューズでスピード練習を繰り返した後に発症するランナーが多く見られるからです。
足底腱膜炎になった場合には中・上級者であっても初心者用のクッション性のあるシューズを履いて走りましょう。
インソール作成も多少の効果があるかもしれませんが、優先順位としてはシューズ>インソールだと思います。
足底腱膜炎の治療・セルフケア
自分でできる事は①足底腱膜のストレッチ②ふくらはぎのストレッチ③タオルギャザーです。論文によると足底腱膜のみのストレッチやふくらはぎのみのストレッチよりも①と②を併用した方がより効果的であるとされています。
過去の報告では週に5日、1日2セット行うプロトコールが使用されているものが多いようです。
ちなみに1セットの内容は下記のとおりです。
20秒のストレッチを5回、間に20秒の休憩を挟む。
(例)
足底腱膜:20秒ストレッチ→20秒休み→20秒ストレッチ→20秒休み.....
ふくらはぎ:20秒ストレッチ→20秒休み→20秒ストレッチ→20秒休み.....
その他、ジムを利用できる場合にはエアロバイクなどを利用して心肺機能の維持に努めましょう。
体外衝撃波治療
医学的にしっかりと足底腱膜炎に効果が確認さている治療機器です。およそ6~7割の方に効果があるようです。体外衝撃波治療器(たいがいしょうげきはちりょうき)には『収束型』と『拡散型』があります。
収束型は医師のみが使用できます。厚生労働省が認めている保険適用は『6ヶ月以上の保存療法を行っても治癒しない難治性の足底腱膜炎のみ』とハードルが高く、それ以外は自費になりやや高額です。衝撃波治療は1回10分。一週間の間隔を空けて4~6回程度行います。
それに比べて拡散型はコメディカルと呼ばれる理学療法士や柔道整復師も使用できるため設置しているクリニックや治療院が随分と増えました。拡散型の治療機器は正確には衝撃波ではなく圧力派で製品名では『ショックマスター』や『マスターパルスMP100』などがあります。
拡散型の衝撃波治療も1回5~10分の治療を1週間間隔で4~6回行います。圧力波を2000発ほど発射し、自由神経終末(痛みを感じる神経)を破壊するので即時に痛みが消失することもあります。またあえて組織を圧力波で損傷させる事で止まってしまった治癒過程をもう一度再開させる効果もあります。そのため損傷部が修復するまで1週間の時間が必要です。全ての方に効果があるわけではありませんが、試してみる価値のある治療法です。
治療中はやや痛みを感じる事がありますが、基本的に痛みを感じないと効果がありません。痛みを感じないという事は圧力波が患部にしっかりと当たっていない可能性があります。そして照射出力も我慢できる限界まで上げた方が効果が高いと言われています。
踵の痛みと言えばたまにレントゲン写真に棘のようなものが写ることがあります。一般的に踵骨棘(しょうこつきょく)と言われます。この骨棘が周りの小さな神経を圧迫すると踵から小指にかけての痛みが出現します。しかしすごく稀な事なので、見た目のインパクトとは裏腹に実は骨棘と痛みはあまり関係がありません。骨棘のありなしに関わらず足底腱膜炎は起こります。
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西院かんな整骨院
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マラソン・ランニング・ジョギング障害!
踵(かかと)の痛みと一言で言っても原因には“足底腱膜炎”や“踵骨疲労骨折”や“踵脂肪体炎”など様々です。過去に自分も大阪府チャレンジ登山大会(通称:ダイトレ)後に踵の痛みを発症し、2週間程歩くのもままならない日々を過ごしたことがあります。一番痛みが強い日には踵をまともにつく事ができませんでした。

足底腱膜炎
最もよく見られる”かかと”のランニング障害は足底腱膜炎です。圧痛点は踵骨の内側の足底腱膜起始部○にあります。 足底腱膜は踵骨(しょうこつ)の中央からではなく、少し内側から始まり扇状に広がっています。走行距離やトレーニングの急激な増加により発症します。別のランニング障害として踵骨の疲労骨折があります、その場合には踵骨の内側と外側○に圧痛があります。かかとを両横からつまむように力を入れると痛みが出ます。


足底腱膜炎の病理所見
足底腱膜炎の病変は、繰り返しの負荷により治癒と損傷の機転が混在する結果、変性を伴う有痛性の瘢痕組織が形成されます。異常な血管新生や神経線維の増生によって疼痛過敏な状態になっています。変性とは簡単に言うと組織の強度が弱くなる変化です。
これまでは足底腱膜炎は慢性炎症をきたした病態と考えられてきましたが、近年、その炎症的側面はあまり大きくないとされ、より組織変性の側面が強調されるようになってきています。実際エコー検査をしても炎症反応はほとんど確認できません。欧米では足底腱膜炎ではなく足底腱膜症と呼ばれるようになっています。
足底腱膜炎は発症から10ヵ月以内に80~90%の方が自然治癒するのですが、長期に及ぶ為、フラストレーションが溜まりやすい障害です。また走れないこともない為に、痛みを我慢して練習すると結局完治までに長期間を要します。

朝の第一歩目の痛み
症状の特徴として朝、起床してから第一歩目の痛み(first-step pain)があります。就寝中に癒合した微小断裂部が起床時の歩行開始により引っ張られて再断裂して痛みが現れます。これにより毎朝痛みを繰り返します。そして断裂と癒合を繰り返しながら最終的には断裂部が癒合できなくなり治癒します。
足底腱膜炎の画像所見
日本人の足底腱膜の厚みは平均2.7mmとする報告があります。(海外では3.8mm)そこから考えると足底腱膜が肥厚していると判断する一つの基準は2.8mm以上になります。(海外では4mm以上)また難治性足底腱膜炎の厚みの平均は4.2mmであったとする報告があります。

上図の□部分をエコーで観察すると下図のようになります。滑らかに足底腱膜がかかとの踵骨(しょうこつ)に付着し、足底腱膜の中には綺麗な横線(フィブリラー・パターン)が確認できます。
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足底腱膜炎のエコー画像
踵骨の付着部で足底腱膜が大きく腫大し、さらに正常の足底腱膜では見られる横の線が消失し、全体的に黒色(低エコー)になっています。MRIを用いた足底腱膜炎の報告では24~58%の患者にしか足底腱膜の肥厚はみられないとされており、肥厚がないからと言って足底腱膜炎ではないとは限りません。
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正常な足底腱膜の厚み
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足底腱膜炎の厚み
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また足底腱膜の踵骨付着部以外でも足底腱膜の実質部が紡錘状に肥厚し、着地の際に土踏まずの部分に痛みを感じることもあります。大きい場合は体表からもわかるくらい足底腱膜の一部が『ぷくっ』と膨れていて、足の裏にしこりができます。

危険因子
①長時間の立ち仕事
②足関節背屈角度の減少
③BMIの増加 (肥満)
それぞれ3つが足底腱膜炎の独立した危険因子ですが、足関節の背屈角度の減少が最も重要です。ただこれは一般の人に関するもので、ランナーであればそれ以外に走行距離の増加、不整地でのランニング、踵着地、薄底のシューズなどが加わるのではないでしょうか。 ちなみに背屈とは足首を上に曲げる動作です。
また偏平足の方は足底腱膜の付着部で痛みが出やすく、逆にハイアーチの方は足底腱膜の実質部(土踏まずの部分)で痛みが出やすいと言われています。
踵部・脂肪体損傷
足底にはクッション材として厚さ2cm程の脂肪体と呼ばれる組織が存在します。この踵部脂肪体は蜂巣状の構造になっており衝撃吸収作用があります。もしこれがなければ足底には組織が圧迫壊死を起こしてしまうほどの高い局所的負荷がかかっています。
しかし、年を取るにつれてこの脂肪体の萎縮(薄くなる)を起こします。これはほとんど例外はありません。つまり若いランナーは天然の厚いインソールを、年配のランナーは薄いインソールを否応なしに履いている事になります。

拡大すると蜂の巣のような袋の中に脂肪が詰まっています。

ちなみに足底は、体表で最も高度に血管が発達した部位です。 なので繰り返す着地衝撃により足底で血管内の赤血球が破壊されて、中のヘモグロビンが尿から排せつされることで貧血を起こします。
この脂肪体が損傷を起こした場合を踵部脂肪体損傷やファットパッド症候群(Heel Fat Pad Syndrome)と呼びます。
足底腱膜炎の圧痛点○と踵脂肪体炎の圧痛点○は微妙に違います。

踵部脂肪体損傷の詳細はこちらのページに別途まとめています。
足底腱膜炎とランニングシューズ
またシューズの見直しが重要です。ソールの薄いシューズでスピード練習を繰り返した後に発症するランナーが多く見られるからです。
足底腱膜炎になった場合には中・上級者であっても初心者用のクッション性のあるシューズを履いて走りましょう。
インソール作成も多少の効果があるかもしれませんが、優先順位としてはシューズ>インソールだと思います。
足底腱膜炎の治療・セルフケア
自分でできる事は①足底腱膜のストレッチ②ふくらはぎのストレッチ③タオルギャザーです。論文によると足底腱膜のみのストレッチやふくらはぎのみのストレッチよりも①と②を併用した方がより効果的であるとされています。

過去の報告では週に5日、1日2セット行うプロトコールが使用されているものが多いようです。
ちなみに1セットの内容は下記のとおりです。
20秒のストレッチを5回、間に20秒の休憩を挟む。
(例)
足底腱膜:20秒ストレッチ→20秒休み→20秒ストレッチ→20秒休み.....
ふくらはぎ:20秒ストレッチ→20秒休み→20秒ストレッチ→20秒休み.....
その他、ジムを利用できる場合にはエアロバイクなどを利用して心肺機能の維持に努めましょう。
体外衝撃波治療
医学的にしっかりと足底腱膜炎に効果が確認さている治療機器です。およそ6~7割の方に効果があるようです。体外衝撃波治療器(たいがいしょうげきはちりょうき)には『収束型』と『拡散型』があります。
収束型は医師のみが使用できます。厚生労働省が認めている保険適用は『6ヶ月以上の保存療法を行っても治癒しない難治性の足底腱膜炎のみ』とハードルが高く、それ以外は自費になりやや高額です。衝撃波治療は1回10分。一週間の間隔を空けて4~6回程度行います。
それに比べて拡散型はコメディカルと呼ばれる理学療法士や柔道整復師も使用できるため設置しているクリニックや治療院が随分と増えました。拡散型の治療機器は正確には衝撃波ではなく圧力派で製品名では『ショックマスター』や『マスターパルスMP100』などがあります。
拡散型の衝撃波治療も1回5~10分の治療を1週間間隔で4~6回行います。圧力波を2000発ほど発射し、自由神経終末(痛みを感じる神経)を破壊するので即時に痛みが消失することもあります。またあえて組織を圧力波で損傷させる事で止まってしまった治癒過程をもう一度再開させる効果もあります。そのため損傷部が修復するまで1週間の時間が必要です。全ての方に効果があるわけではありませんが、試してみる価値のある治療法です。
治療中はやや痛みを感じる事がありますが、基本的に痛みを感じないと効果がありません。痛みを感じないという事は圧力波が患部にしっかりと当たっていない可能性があります。そして照射出力も我慢できる限界まで上げた方が効果が高いと言われています。
踵の痛みと言えばたまにレントゲン写真に棘のようなものが写ることがあります。一般的に踵骨棘(しょうこつきょく)と言われます。この骨棘が周りの小さな神経を圧迫すると踵から小指にかけての痛みが出現します。しかしすごく稀な事なので、見た目のインパクトとは裏腹に実は骨棘と痛みはあまり関係がありません。骨棘のありなしに関わらず足底腱膜炎は起こります。

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